月の上の観覧車  荻原浩

月の上の観覧車  荻原浩

ユーモアに満ちたゆる~い作品も書くが
このような渋~い作品も書くことのができる荻原さん
つくづく凄い作家だと思う

この作品は短編を8編集めた小説である
どの作品も年を重ねた主人公が、自身の過去を振り返る話である
そしてどの話も大切な人を失ってしまう話であった
失うとは亡くなるだけではない、会えなくなるとか別れるとか
色々なケースがあった

全てが何処にでも誰にも存在するような平凡でさりげない話だ
そして回想する思い出は懐かしいが、決して楽しいものばかりではない
というより大半は物悲しく、できればそっとしておきたい思い出である
過ぎ去った時間の中に存在したあの時の自分を問いただすように
そっと自分とも過去とも向き合っていく

きっとこの感覚は若い人にはイメージしにくいと思う
この短編の各主人公のように、ある程度年を重ねなければ
この哀愁漂う世界感はなかなか理解できない感じがする
上手く言えないが、月日の経過を受け止めるしかなくなった年齢と
言えばよいだろうか?
月日の経過に、まだ抗える年齢では理解しにくいだろうと思う

8つの話の中で表題作である「月の上の観覧車」は間違いなく良いのだが
私は「ゴミ屋敷モノクローム」、「胡瓜の馬」が良かった
この2つの話は、ストーリーの題材の身近さに
特に共感できる作品であった

「思い出は美しい」と誰かが言っていたが、正にそんなことを
思わせてくれる小説であった

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