百枚めの写真 ~一銭五厘たちの横丁~
原作である「一銭五厘たちの横丁」は、1975年(昭和50年)に
児玉隆也著、桑原甲子雄写真で出版された書籍である
タイトルになっている今はほとんど聞くことのなくなった
「一銭五厘」とは、戦時中使われていたお金の単位であるが
今の貨幣価値では、大雑把に30円程度だという
当時の召集令状のはがきの値段が一銭五厘だったことから
この名前が付けられている
この原作を作・演出 ふたくち つよし で舞台化している作品が
この「百枚めの写真」であるが、この舞台過去3度
(初演2010年)上演されていて、今回が4度目というから
人気のある演目であることが伺える
昭和49年東京の下町が舞台
ルポライターの児玉は99枚の写真を手にこの下町にいた
民家を一軒一軒訪ね回り、写真に写された人を探しているのだった
手にしている写真は、昭和18年当時アマチュアカメラマンだった
桑原甲子雄が撮影した写真である
この児玉の行動は、東京の大雑把に下谷区というだけで
場所の明確な特定ができていない人探しであり、30年という長い
空白時間と、空襲後の焼野原から街を再構築した東京ということもあり
正に雲を掴むような困難な行為に思えた
桑原の撮影した99枚の写真は、陸軍省から依頼された仕事だった
東京の下谷区付近で出征軍人の留守家族を訪問し
一家族一枚だけ撮影し、写真に収めていった
フィルムは軍からの支給だったという
写真の目的は戦地で戦っている兵士に見せ、軍の士気を高めるのに
使うためのものだったようである
そんなことがあったことも私は初めて知ったのだが
意図は理解できるので、特段違和感は感じなかった
やがて児玉は1枚の写真に写った家族を探すことが出来た
そしてその家族から当時の家族や近所の様子についての貴重な
話を聞くことができたのだった
家族は桑原の写真を見ることにより、改めて写る人達を思い出し
その時代の様子や戦争の記憶をより鮮明に思い出していくのだった
そこには戦争の悲惨さや、愛する人との別れなど、計り知れないほどの
悲しい経験がたくさんあった
何も変わらない写真だが、年月を経ると共に重要な
意味を持つようになる
そんな写真の記録的魅力が感じられる作品だった




