遮光 中村 文則

遮光   中村 文則

中村文則さんのデビュー第2作品目
私は彼の作品を初めて読んだが、独特な世界観だと思った
簡潔で的確な文章の中には、不穏な空気が充満している
ご本人自身もあとがきにしつこいほど書いているが
今の時代にあまりない暗く癖のあるタイプの小説なのかもしれない

確かに読んでいる間、幸せな気持ちにはならなかった
そしてこの本の主人公である青年が好きにはなれなかったし
まるでその言動が理解できなかった
だが、このような人は実際に何処かにいそうだとリアルに思えた
これは書き手の上手さなのだと思った

それは作品のタイプは違うが安倍公房の作品に
どこか通じるものがある感じがした
全く非日常と思える妄想であるのに何故かリアルに感じられる
尖ったところの表現が凄いのであると思う

そして私はこの本の読み始めが好きである
主人公が乗るつもりのあまりないタクシーを止め
運転手に行先を告げるところから始まる
すると距離が近いので、運転手は良い顔をしなかった
そこでの運転手との細かなやり取りや、到着した喫茶店内での
郁美とのやりとりが手に取るようによくわかるのだ
そこで思ったことは、この作家は書かれた言葉を飛ばすことなく
読まないといけないことである
余計な文章は無く、全てが意味を持っているような感じである

最後に美紀の指を口に含んだシーンはかなり強烈に感じたが
虚言癖のある青年が唯一、自分に逃げることなく戦った結果と
考えると、壊れて当然なのかもしれないと思った

好き嫌いはわかれるかもしれないが、独特な世界観を持っている作家だと思う
私は嫌いではないし、文章の上手さに圧倒された感があるので
是非別の作品も何冊か読んでみようと思った

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください