五年の梅 乙川優三郎
乙川さんの作品を初めて読んだのは10年ほど前になる
その時読んだ作品は、直木賞受賞作の「生きる」であった
「生きる」を読んだ時の感動は凄いもので、これまでに数回しか
味わったことのないような大変大きなものであったことを
今でもはっきりと思い出す
その時受けた感動があまりにも大きかったので
当然だがその後、乙川作品を現代物、時代物問わず何冊か読んでみた
その時、それらすべてが真摯に且つ丁寧に取り組まれた作品であることを
改めて感じさせたられた
「生きる」もそうであったのだが、乙川さんの作品の中では
個人的には時代物のほうが好きである
その時代に生きる名もなき貧しい町民にスポットを当てた作品が
多いのだが、巧みな心理描写ときれいな文体からそれら町民の
気持ちが伝わってくるようである
この作品も時代物で、やはり名もなき町民を主人公にしている
さらに言えば、もう若くない年齢の女性にスポットを当てた作品である
どの女性も辛く耐えがたい人生を歩いてきた己の過去を振り払う決断をし
自己を開放する様が色々なタイプの物語に落とし込まれている
この作品は2001年の山本周五郎賞受賞作である
全5編の短編に登場するそれぞれの女性は皆、人生の後半になってから
その後の人生がまるで変わるような決断をする
そしてその後は、上手くいった者もいれば必ずしもそうでない者もいる
しかし、その決断を後悔する様子はなく、失敗に終わっても
決して悲壮感はなく、どこか清々しさを感じられる所に救われる
丁寧に心理描写された文章からは、そんな繊細な気持ちの変化までもが
読み手に伝わってきた
5編の中では「小田原鰹」、「蟹」、「五年の梅」が特に好きだった
最後に収められた表題作「五年の梅」は読後に大きな余韻が残る作品だった




