ヒトラーに盗られたうさぎ
ドイツの絵本作家ジュディス・カーが自らの少女時代の実体験を
基につづった自伝的小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」を
映像化した作品だという
ナチスが勢力を拡大する時期のドイツがそもそもの舞台なので、この作品も
いわゆる「ナチスもの」になるかもしれない
もう半世紀以上経った現在でも年に何本ものナチスもの映画が誕生しているし
私自身これまで本当にいくつものナチスもの映画を観てきた
この作品がナチスが統治しようという時代を描いた作品だということぐらいしか
前知識ないまま鑑賞したのだが、これまで観てきた「ナチスもの」とは
明らかに少し違っていた
その大きな理由は、この作品には実際の戦争のシーンが全くないどころか
軍服を着た兵士すら登場しないことである
只、人が死ぬような生々しいシーンが全くないこの作品であっても
ナチスの勢力が拡大していく状況が表現できてしまうという
別の恐ろしさを感じることができる
実際の争いのシーンが出てこないのには理由がある
それはこの本を書いた幼少期のジュディス・カー(映画の中の主人公アンナ)が
実際の争いを見なかったからだろう
だが、アンナの目線で捉えた世界がこの作品の最大の魅力なのである
舞台は1933年2月のベルリン
両親、兄と4人家族で裕福に暮らす9歳のアンナたちは家族で
スイスに向かった
選挙でのヒトラーの勝利が現実味を帯びてきたことで
これまで新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していた父の
居場所がドイツに無くなることが予想されたからである
国を追われての亡命という名の逃亡であった
ドイツ近隣の国の状況は徐々に変化し、やがてアンナ一家はスイスを出てパリに向かう
そしてこの旅は最終的にパリからロンドンに移って終了した
ナチスから逃げるための旅なので不自由でつらい旅なのだが
アンナの目線から見ると、行く先々で新しい発見の連続のような
好奇心に富んだ旅に見えているところに子供の柔軟な適応能力を感じる
そしてそれがこの作品をそれ程重い作品にしてないところが良い
ヒトラーが選挙で勝たなければこの旅は無かったのだと思うが
アンナと兄にとっては語学力はもちろんのこと決断力と視野を広げるための
運命的な旅になったとせめて思いたい




