生きる 乙川優三郎
2002年 第127回直木賞受賞作品である
ここのところゆるい本ばかりを読んでいた私だったが
久しぶりに深く感動する本を読んだ
この本の中には、「生きる」「安穏河原」「早梅木」の
短編(中編という言葉があるのなら中編かもしれない)3編が
収録されている
時代小説だが、現代でも理解しやすいストーリーであるので
読みにくさは感じられないと思う
どの作品も年老いた武士の生きざまが描かれており
淡々と書かれているのだが、話の根にある部分は
骨太で非常に力強く、そして重い
3編が全て年老いてから自身の若かりし頃の決断が
正しかったのだろうかと自問を繰り返し
後悔や自分の弱さを反省をするのだが
正にこれが「生きる」ということなのだと思えた
過去に間違えているかもしれない決断を沢山してきたことが
生きてきたということの証しなのかもしれない
そんな男たちとは対照的に、登場する女性たちの生きざまの
気高さと潔さが際立っていて、そこに小説の中の男も
読者も深い感銘を受けるのだ
3編とも藤沢周平さんの作品のように、読んでいる間は
頭の中で映像が浮かび上がってくるような作品なのだ
もしどの作品かが、映像化さるようなことがあれば
是非観たいと思う
そしてもう一つ
作品自体も、当然大変素晴らしいのであるが、縄田一男さんの書かれた
解説がまた的確で、とてもとても素晴らしい
その中には本作品が直木賞を受賞した時の、審査員の作家先生たちの
選評も掲載されているのだが、それらの文章がまた唸るほど素晴らしい
さすがは審査員になるほどの作家である
私の思っていたことも、思いもよらなかったことも簡潔だが
的確に示していた
私も3編の中では、審査員の井上ひさし先生が大絶賛していた
「安穏河原」が特特に好きだった
電車の中で読んでいたのだが、ラストシーンでは堪えられずに
涙してしまった




