武家用心集 乙川優三郎

武家用心集    乙川優三郎

乙川さんの小説を読むようになったのは
直木賞受賞作「生きる」からである
この時代小説を読み終えた時の感動は今でも覚えている
私にとって間違いなく十年単位で一度あるかないかという
レベルの感動だったことを思い出す

乙川さんは時代物に限らず色々なジャンルを書かれているので
色々と読んでいるのだが、どれも素晴らしい作品だと思う
その中でやっぱりになってしまうが、特に私は時代物が好きである
これは「生きる」の感動をまだ引きずっていることが
原因かもしれないと思うのだが
「生きる」はそのぐらい私の中で凄かった

この作品も時代物であるので、読む前の期待値が相当高かったのだが
やはり素晴らしい作品で、勝手な期待値を越えてしまうのだった
簡潔だが丁寧な描写、頭の中ではっきりと映像イメージできてしまう
数々の感動的シーン
この作品も例外ではなかった

タイトルに付いた「用心集」という言葉が気になり調べてみた
直接この言葉の意味は出てこなかったのだが
江戸時代の八隅蘆庵が1810年に表した「旅行用心集」の
書物ことが出てきた
ここでの意味は、旅行の心得という意味で使われていた
この本では、恐らく武家の心得という意味で付けられていると思えた

8編からなる短編集であるが、どの作品も身分の高くない
一般の人々に焦点を当てている
そして時代物といっても人間関係のトラブルや親の介護
出世レースなど現代においても普通に存在するような題材が
テーマになっている
どの作品も美しい言葉から人物の小さな心の動きまでもが
読み解けてくる

私は年老いた母の介護がテーマである「しずれの音」
という作品が特に感動した
ラストの母と娘の会話とその後の夫の行動には涙してしまった

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