どん底
この秋の新国立劇場の演劇は「ことぜん」シリーズ3本が上演される
私には聞き慣れてないこの「ことぜん」という言葉は、この劇場の
芸術監督である小川絵梨子さんが言うことには個と全を
指している言葉だという
個とは個人のことで、全は国家や社会構造、集団といった
集合体のことである
ここまでわかると何となくだが、個人と集団との関わりを
テーマとしたシリーズなのだと推測できる
このテーマは実に身の回りに多くて、いたるところに存在している
というか、このシステムが関わり合ってないものを
探す方が大変なくらいだと思う
しかしながら、どこにでもあるからと言って誰もが個と全のシステムを
理解し、誰もがうまく立ち回れえているとは限らない
むしろ自分に置き換えて考えてみても、個と全の関係を意識し
上手に立ち回れたことなど限りなく少ないと思う
個性を持つ個人が集まった集合体は、全く予測不可能といってよいだろう
だから常に変なことが起きてしまうし、それがいつも違うのでより面白い
そして理由を明確に言うことはできないのだが、このようなテーマは
映画というより断然、演劇向きだと私は思う
そんなシリーズ3作品の最初の1本が、この作品「どん底」であった
ロシアの作家ゴーリキーの戯曲である
大変有名な作品で世界中で演じられる作品だが、私は戯曲も
読んことはなく、演劇でも初めて観た作品だ
時代は20世紀初頭のロシア
社会の底辺に暮らす人々が集うボロ宿が舞台となっている
宿の夫妻と妻の妹、そしてそこにいるしかない「どん底」な
人々が絡んだ物語である
初めて観た私の感想は、不思議な作品だと思った
ストーリーはほとんど無いに近いと思うが
だからといってわかりにくい作品にはなっていない
むしろセリフの意味は、よく理解できる作品だった
ストーリー全体通してだが、小さな希望が大きな絶望で
かき消されていくような閉塞感が充満しているかのようだった
そして、この空気の中にゴーリキーの表現したい世界があって
五戸さんが、演劇で表現したい世界もあることを想像すると
とても哲学的な話に思えてくるのだった




