潮流  伊集院静   

潮流   伊集院静   

今年1月にくも膜下出血で倒れられた伊集院静さん
3月には手術後の後遺症もなく、順調に次のステップであるリハビリに
励んでいるというコメントがご本人から発表された
今後は小説、エッセー等の連載も随時再開する予定だというから
ひとまず安心できるところまで回復された様子で何よりである
ご無理をせずに、ゆっくりと執筆活動を再開して欲しいと思う

この「潮流」は、数ある伊集院さんの作品の中でも特に有名な作品のひとつである
それは、伊集院さんと前の奥さんであった故夏目雅子さんの出会いから
付き合うまでを書いた自伝的作品だと思われているからである
ご本人が直接そのような話をされているかについては、私自身が本や映像などで
見聞きしたことはないので、本当に本当なのか?まではわからないのだが
主人公の境遇が、お2人の過去とあまりにも似ているので、そう感じるほうが
自然だし、仮にそうであるとすれば、勝手だが読み甲斐がでてくる気がする
出版は1993年のことである

大手化粧品会社のCMを作る高山健一と無名の新人唯子
彼女は幸運にも大手化粧品メーカーのキャンペーンに大抜擢され
撮影のために訪れた異国で初めて二人は顔を合わせた
今読むと、バブル期の雰囲気がプンプンとしてくる始まり方である

私はこの時代設定が、自身の子供の時期と重なって大変懐かしく思えた
当時の夏目さん出演CMもはっきりと記憶に残っているし
当時は、ザ・ベストテンなどで化粧品のキャンペーン曲が
よく売れていたことなども思い出した

この時代についてもう一つ感じたことは、皆一生懸命で熱かったことである
良いか悪いかは別にして命がけで働いていたように思える
過労死や働き方改革などで制限の掛かった働き方とは全然違っていたと思う
そして不倫に対する社会的感覚も今の時代とは全然違っていた
ほんの数十年前のことだが、確実に時代が動いていることが感じられた

高山は今の時代では生きられないかもしれないような男に思えた
生意気だが結果は残すし、冷めているようで実は人一倍熱い
会社員だが、最終的には全て自身でジャッジしている
こんな社員が今存在していたとしたら、かなりの問題社員だろう
作品内では、高山を悪く書こうとしている感じがするのだが
不思議なもので悪く書けば書くほど私には、かっこよく思えてくる気がした

タイトルの「潮流」という言葉には
   1.潮の流れ
   2.海の干満によっておこる海水の流れ
     一日に二回ずつ、その流れの方向が逆になる
   3.時勢の動き、時代の流れ  「時代の-に乗る」
                      などの意味がある

私は、この作品は3の意味が強いと思っていたのだが
ラストの逗子の海と思われるシーンの部分を読んだ時、2の意味が
強いかもしれないなどと思った

伊集院さんの作品らしく、登場人物のセリフにとても味があり
読後の何とも言えない感覚が、クセになる作品だ


 

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