カセットテープ・ダイアリーズ
2019年制作のイギリス映画
実話を基にした青春音楽ムービーである
タイトルになっている懐かしい言葉である「カセットテープ」
今では死語に近いこの言葉が、時代を表わしているように
この作品は1980年代のイギリスにある田舎町ルートンが
舞台になっている話である
この町に住むパキスタン移民の少年ジャベドが主人公である
移民に対する人種差別が強い当時のイギリスで、パキスタン人の受ける
差別は相当の忍耐が必要なものだったことが映画の中からだけでも伺える
それに加え、ムスリムのパキスタン人家族の慣習が彼を常に抑圧していた
近所に住む同年代のイギリス人の友人のように、羽目を外して女の子たちと
遊ぶことなど厳格な父親の手前、決して許されることではなかった
そのためかジャベドは内向的で、自分の意見を外に向かって
はっきり言うことがいつも出来ずにいた
もともと文才があった彼は、その内向的な趣味である文章を
書くことだけが、唯一救いのような日々を送る毎日を送っていた
その毎日を変えたきっかけが、ブルース・スプリングスティーンの
音楽との出会いだった
彼の音楽は、それまでのジャベドのすべてを変えてしまうほどの
大きな影響を彼に与えたのだった
ジャベドが、チェックのシャツの袖を切った時は思わず笑ってしまった
それは、私の中のスプリングスティーンのイメージそのものだったからである
当時のイギリスではパンクが去り、ニューウェイブと呼ばれるおしゃれな
音楽が全盛期だった
悪い言い方をすれば、チャラチャラした音楽と言えるかもしれない
しかし、ジャベドはそんな音楽を楽しむ余裕がなかった
彼が欲していた音楽は自身の代弁者のような音楽、身の周りに近いところの
怒りや喜びや希望や愛を歌う音楽だったのだ
心のよりどころとなる音楽に出会い、彼の変わっていく様が
描かれているのだが、中盤以降は徐々に単調になっていった
しかし、この作品は私の個人的評価に比べ、世の中的には
大変高いものになっているようだ
男性客の中には何と涙腺を緩ませるものも多いのだという
色々な境遇の人がいるから理解できないことではないが、私には意外だった
それでもブルース・スプリングスティーンの名曲を久々に大音量で
聴くことが出来て、ちょっとタイムスリップ気分を味わえたようで懐かしかった




