東京酒場漂流記   なぎら健壱

東京酒場漂流記   なぎら健壱

この文庫本は1995年に出版されたのだが
元は1983年にCBS・ソニー出版から出版された単行本の文庫化である
だからこの本には40年近く前の東京の酒場が書かれていることになる
それだけでも大変歴史的な価値(?)のある作品であると言えるだろう

私はなぎらさんの著書をよく読んでいる
なぎらさんの本のラインナップは、酒に関する本と下町散歩的な本が多い
カメラも好きなので、町のスナップ写真集のような本もいくつか出している
これは正に、私の興味の的の真ん中になるようなジャンルなのだ
そして文章も簡潔で洒落ているので読みやすく、面白く、ホッコリとしている
そういったわけで、これまでにかなりの本を読んでいると思う

私の中では酒場が似合う顔というものがある
吉田類さんも当然だが、なぎらさんも横綱クラスであることは間違いない
しかも吉田さんとは違いなぎらさんの場合、初めて入った店で飲んでいたとしても
他の客が見たら、20年以上通っている常連客に見えるような
どんな店にも馴染んでしまうような魅力を感じるのだ
そんな天性の雰囲気を持つ男は、なかなかいないだろう

この本は現在のように、こんなにチェーン店ばかりでなかった1980年代の
東京の大衆酒場の雰囲気と、そこにまつわる人々が描かれている
昭和の大衆酒場と言ってもいいと思う
イラストレータの栗山さんという相棒と共に、好みの酒場を訪れる探訪記である
この栗山さんとなぎらさんの会話も出てくるのだが、この栗山さんも
なかなかの人物であることが伺える
おそらく飲みに行きましょうと誘えば1000回に1度くらいしか
断らなそうな強者に思えた

文章はいつも通りこなれていて面白いのだが
栗山さんのイラストもあって、まるで自分がお店で飲んでいるような気分になれる
この本のレビューを見ていたら、酒を飲みながら読むと
イイと書いている人がいたが、なるほどと思った

コロナ禍で忘年会も新年会も行わない人が多い
私も2020年3月から飲みに出てない
こんなに長い間飲みに出ないことは人生において一度もなかったことである
この本を読んでいると、ガヤガヤとした活気ある酒場で飲んでいた日々が
当たり前だった頃が、懐かしく思えるのと、アフターコロナ時代では
大衆酒場がどのようになっていくのだろうか?という心配を感じたりした

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