キング・オブ・シーヴズ

キング・オブ・シーヴズ

2018年制作のイギリス映画
個人的には前々から楽しみにしていた注目作だ
2015年に実際に起こった事件の映画化だという
この事件だが、英国史上最高齢かつ最高額の金庫破りとして
世界を驚かせた窃盗事件だったようである

「ようである」と書くしかないのは、私の記憶にこの事件が
全く残ってないからである
2015年といえば最近のことであるのに忘れてしまったのか?
それとも事件の存在すら知らなかったのか?それすら覚えていない
いずれにしても記憶がないのだから私にとってはとても新鮮な
事件であることは確かである

そしてこの事件、きっと多くの人が感じていると思うが
映画にするのには格好のネタであることも容易に理解できる
だからこの作品に注目していた人は少なくないはずだ

予告編を見る限りではコメディー的要素が強い作品のイメージだったが
実際観ると、その予想は外れていることに気づかされる
確かに笑えるセリフも多いのだが、淡々とその事件を再現し
そしてその後の様子を振り返っているような作品だ

主演である「泥棒の王(キング・オブ・シーブズ)」と呼ばれた
ブライアンを演じたマイケル・ケインをはじめとして
窃盗集団を構成している俳優はベテラン揃いである
ジム・ブロードベント、トム・コートネイ、レイ・ウィンストンといった
俳優たちの演技は実に自然で流石というしかない
まるで本当の集団かと思うほどしっくりしていたし
個々の争いも本当にリアルでしかなかった

私は単なるコメディー作品にしなかったことがこの類まれな怪事件を
より事件を理解できる作品にしていると思った
そしてこの事件に関わった老人たちの脱退劇や分け前をめぐる醜い争いを
たっぷりと見せられると、金や欲は年齢や経験では
乗り越えられないものかもしれないと
人間の駄目さを肯定させられてしまう感じがした
そういった生々しいリアルさを感じさせてくれる作品でもあった

たった一人捕まらなかった若者は、どこかでこの作品を見ただろうか?
観終わった後そんなことも気になった

藁にもすがる獣たち

藁にもすがる獣たち

2020年制作の韓国映画である
韓国が得意とするクライムサスペンスものである
このジャンルで韓国の作品には大変面白い作品が多いこともそうであるが
特にこの作品に関しては、日本人作家 曽根圭介の小説を
映画化した作品であるということもあったため、強く興味を持ち鑑賞してみた
曽根圭介さんについては失礼ながら全く知らなかったので調べてみると
今も現役の作家で、何と静岡県沼津市出身の人だった

まずストーリーの構成が素晴らしい
いくつかの別の話を徐々に関連付けしていき、最後にはその全てを
一つのストーリーに繋げるというストーリーである
これは映画では、特に珍しいものではないのであるが
鍵となる10億ウォンの入ったルイ・ヴィトンのバックも印象的だし
このバックにまつわるストーリーの関連付けも面白いし、無理なく
そして自然であった

出てくる人物は全員がお金に本当に困った人もしくは
お金が大好きで、損させられるのが死ぬより嫌という
異常なまでにお金に執着した人である
そんな人たちが10億ウォンのバックの争奪戦を繰り広げていく

いくつかのストーリーの中で私は、夫の暴力に苦しむ主婦ミランが
勤め先のクラブの経営者であるヨンヒの手により落ちていく様に
最も恐怖を感じた
一人殺してしまったらもう何人殺しても同じという世界まで
とんとん拍子に落ちていってしまった
ヨンヒを演じたチョン・ドヨンの存在感が光っていた

最後のシーンで偶然にも最初の銭湯のロッカーで見つけた男の
妻に見つけてもらった10億ウォンの入ったルイ・ヴィトンのバック
ここまでくるとバックと金に強い呪いが掛けられているのでは?とさえ思えてきたりした

この作品を鑑賞した曽根さんも映画の出来を絶賛してしたというが
私もお金と人間の間に存在する理性と建て前と本性がリアルに表現できた作品だと思った
大金を追いかけるあまりに最も大切な自身の命を失ってしまう
外野で見ている人からは愚かで滑稽な姿に見えるが、もし自分が同じ立場だったら?
と考えると笑えない人は多いと思う
そして私は間違いなく笑えないほうの人間であると思った

ボスの用心棒だけがお金のために動いてなかったことが理解できなかったが
彼は殺人マニアという病気の人と理解することにさせてもらった

沈黙、愛

沈黙、愛

2017年制作の韓国映画である
昨日紹介した「感染家族」はコメディーホラーのような作品だったが
この作品は法廷サスペンスものである
ノワールやクライムサスペンスに良い作品が沢山ある韓国映画であるが
最近ではそれに限らず様々なジャンルの作品が制作されてきている
そしてそれらの作品の多くは完成度が高く、一定のレベル以上であるので
また観てみようかという気にさせられてしまうのだ

そして最近の韓国映画はハリウッドでリメイクされることも多くなった
ストーリーがよく出来ていて面白いことが理由であるが
同時に韓国以外の映画や原作のリメイクも盛んになっている
最近では、村上春樹原作の映画「バーニング 劇場版」や「鍵泥棒のメソッド」が
原案の作品もあったが、どちらも面白い作品になっていた
実はこの作品も中国映画「全民目撃」をリメイクした作品らしい
面白い脚本を貪欲に求める姿は凄いものである

本筋とは違ってどうでもよいことなのだが、タイトル名がダサい
どうしてこのタイトルになったかは観終わって納得できるのだが
私は一瞬観ることをやめようかと思ったくらいだった
しかしレビューは高く、ポスターに「オールド・ボーイ」の
チェ・ミンシクの姿が見えたので気を取り直したところがある

ストーリーは映画ではよくある話だ
実業家として大成功をおさめ多くの権力や富を手にし、更に美人有名歌手の
ユナとの再婚も決まったイム会長(チェ・ミンシク)
順風満帆ですべてを手に入れたように見えたイム会長にも悩みはあった
それは実の娘であるミラとユナの仲がしっくりいってないことだった
このあたりは昔からテレビドラマなどでもお約束と思える設定である

そんな中、事件が起きる
ユナが何者かに駐車場で車にひかれ死んでしまう
そしてその容疑者として娘のミラが逮捕された
イムは法廷でミラの無実を勝ち取るためにミラの知り合いでもある
チェ・ヘジュンという若い弁護士を雇い、自らの手も使い事件の
調査を開始するのだった

その後、舞台は法廷に移されて検察側と弁護側のバトルが最大の
見どころになっていく作品である
途中ストーリーとは関係なさげな意味不明なシーンも少しあったのだが
裁判のヤマ場となる仕掛け(大仕掛け)はなかなか面白かった
只、少し前から何となくその仕掛けに気づいてしまったので
驚きは半減したような感じだった