ポイントブランク 標的にされた男

ポイントブランク 標的にされた男

2014年制作の韓国映画である
私は原作を観てないが、原作はフレッド・カバイエ監督の
フレンチノワール「この愛のために撃て」で、この作品はその
韓国版リメイク作だという

「この愛のために撃て」には、ハリウッドでのリメイク企画も
進行しているというからストーリー的にはかなり評判が良いことになる
そんなこともこの作品を観れば、納得できるような作品となっていた

私は、まず始まり方が好きな作品だった
雨の夜、一人の怪我をした男が二人の男に追われているシーンから始まる
薄暗い画面からは、はっきりとした人物の様子はわからないし
説明的なシーンはないので、誰が主役でどんな話が始まるかなど一切見えてこない
そのうちに逃げていた男が車にひかれて病院のシーンに変わった

二人の主役がいる作品だが、一人は重傷追いながら更に交通事故に
あった元傭兵ヨフン(リュ・スンリョン) である
そしてもう一人は、その運ばれた急患ヨフンを治療した身重の妻を持つ
青年医師テジュン(イ・ジヌク)である

男ヨフンが病院に運ばれてきた時、ヨフンの腹部に銃創があること気付いた
テジュンは驚愕したが、それでも手当を施して帰宅した
翌朝テジュンは自宅で侵入者に襲われ気絶している隙に
身重の妻を誘拐されてしまう
携帯の呼出音でようやく目覚めたテジュンは何者かに
「妻を取り返したければ、ヨフンを病院から連れ出せ」と脅迫されるのだった

警察と謎の犯罪組織に追われることになったヨフンとテジュン
共に逃げる羽目になった二人は当然最初は敵対していた
特にテジュンは事態をまるで受け入れられなかった
しかし、この二人は徐々に互いを理解し、共闘するようになっていった

最初から最後まで気の抜けないアクションが続く
私がこの作品で最も印象深かったのは、かっこいい女刑事が撃たれたシーンだった
その部下の女刑事も含め、物語にマッチした感じの刑事だったので
もう少し長く観たかった感じがした

東京酒場漂流記   なぎら健壱

東京酒場漂流記   なぎら健壱

この文庫本は1995年に出版されたのだが
元は1983年にCBS・ソニー出版から出版された単行本の文庫化である
だからこの本には40年近く前の東京の酒場が書かれていることになる
それだけでも大変歴史的な価値(?)のある作品であると言えるだろう

私はなぎらさんの著書をよく読んでいる
なぎらさんの本のラインナップは、酒に関する本と下町散歩的な本が多い
カメラも好きなので、町のスナップ写真集のような本もいくつか出している
これは正に、私の興味の的の真ん中になるようなジャンルなのだ
そして文章も簡潔で洒落ているので読みやすく、面白く、ホッコリとしている
そういったわけで、これまでにかなりの本を読んでいると思う

私の中では酒場が似合う顔というものがある
吉田類さんも当然だが、なぎらさんも横綱クラスであることは間違いない
しかも吉田さんとは違いなぎらさんの場合、初めて入った店で飲んでいたとしても
他の客が見たら、20年以上通っている常連客に見えるような
どんな店にも馴染んでしまうような魅力を感じるのだ
そんな天性の雰囲気を持つ男は、なかなかいないだろう

この本は現在のように、こんなにチェーン店ばかりでなかった1980年代の
東京の大衆酒場の雰囲気と、そこにまつわる人々が描かれている
昭和の大衆酒場と言ってもいいと思う
イラストレータの栗山さんという相棒と共に、好みの酒場を訪れる探訪記である
この栗山さんとなぎらさんの会話も出てくるのだが、この栗山さんも
なかなかの人物であることが伺える
おそらく飲みに行きましょうと誘えば1000回に1度くらいしか
断らなそうな強者に思えた

文章はいつも通りこなれていて面白いのだが
栗山さんのイラストもあって、まるで自分がお店で飲んでいるような気分になれる
この本のレビューを見ていたら、酒を飲みながら読むと
イイと書いている人がいたが、なるほどと思った

コロナ禍で忘年会も新年会も行わない人が多い
私も2020年3月から飲みに出てない
こんなに長い間飲みに出ないことは人生において一度もなかったことである
この本を読んでいると、ガヤガヤとした活気ある酒場で飲んでいた日々が
当たり前だった頃が、懐かしく思えるのと、アフターコロナ時代では
大衆酒場がどのようになっていくのだろうか?という心配を感じたりした

工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男

工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男

2018年制作の韓国映画である
北朝鮮に潜入する韓国のスパイものである
この手の作品は韓国映画にかなり多いが、どの作品も
それぞれ個性があり、面白い作品が多い
もうだいぶ前になるが、私が韓国映画を観始めた頃の話題作
「シュリ」(2000年日本公開)も、そんな作品だったことを思い出した
そしてこの作品「工作」は、実話を基にした話である

タイトルの「工作」とは、スパイの工作活動を指していると思うが
いきなり工作と書かれると、私は何だか「?」な感じがした
今となっては懐かしい「図画工作」も頭の隅をよぎってしまったくらいだ
「工作員」とかであれば、図画工作まで妄想がいかないと思うのだが…
こんなことを思うのは私だけなのかもしれないけれど…

韓国映画が好きな私は、これまでにかなりの作品を観てきたと思う
数まではわからないが、日本映画の10倍は観ていると思う
それだから自然に韓国の俳優も、知っているようになった
名前まではわからなくとも、顔を見れば覚えている程度であるが
結構な人数の俳優に見覚えがあると思う

主役である韓国のスパイ黒金星を演じたファン・ジョンミンは
もちろん名前も知っていたが、この作品の主要な登場人物は
ほとんど見覚えあるメンバーだった
これだけ知っている俳優が多い作品は、初めてかもしれない
よく見る顔が多いということは、それだけ出演者が豪華で
力を入れた大作であるのだと思う

舞台は、1990年代の北朝鮮(最高指導者は金正日の時代)である
北の核開発の実態を探るため、事業家という身分で北に潜入した韓国のスパイ
黒金星の工作活動を描いた作品である
それだから北朝鮮に滞在しているシーンが圧倒的に多いのだが
それがこの作品に特別な緊張感をもたらしている

独裁国家の権力構造では、たった一つの言動のミスが命取りとなる
それだけで緊張感が半端ないのだが、黒金星は冷静に任務を遂行する
やがて対外交渉を一手に握るリ所長の信頼を得ることに成功し
何と、最高指導者である金正日(かなりリアルだった)に面会できるまで入り込んだ
北朝鮮の飢餓状況や、韓国の大統領選挙時の北の対応なども描かれており
何処までが真実なのかわからないのだが、そこがまた興味深かった

黒金星とリ所長の互いの腹の探り合いと、その後に芽生えた友情が
実に見ごたえある作品だった
更に、それらの表現方法も見事なほど絶妙であった