クライ・マッチョ

クライ・マッチョ

個人的には今年最初の注目作である
クリント・イーストウッド監督は1930年生まれなので
たぶん今91歳だと思うが、この年齢で監督・製作・主演を務め
ハリウッドの第一線でバリバリやっていることがすでに奇跡だと
思う人は圧倒的に多いはずである

これまでヒーローからダークヒーロー、平凡な一般人、ろくでなし、犯罪者などなど
色々な作品を監督し見せてくれたが、一貫していることは描かれた主人公は
自分の信念を貫く骨太な生き方をしていることだ
これはクリント・イーストウッド自身の映画に向かう姿勢とも重なっている
そしてその人物像は、私の憧れともピッタリ重なっている

今回も期待通りの素晴らしい世界を見せてくれている
人と人が作り出す言葉にできないような生き生きとしたシーンの連続だ
かつてはロデオ界のスターだったが、今ではすっかり落ちぶれた年老いたカウボーイのマイク
(クリント・イーストウッド)が昔の雇用主に依頼され、メキシコで元妻と暮らす10代の
雇用主の息子・ラフォを連れ戻しに向かう
アメリカからメキシコそしてメキシコからアメリカ国境手前までの道中が
描かれた作品となっている

途中で起こる出来事は人生と同じで突然だし、いいことも悪いことも混ざっている
体力だけでは乗り越えられないし、体力がないと乗り越えられないこともある
老人と少年が奇跡のバランスでそれらを乗り越えていく様が
ユーモアを交えながら描かれている
全編にわたり交わされるセリフも洒落ている

流石に俳優イーストウッドの動きには年齢が感じられ、ゆっくりに見えるが
それはこの映画で監督が伝えたかったポイントとは全く違うので
私は気にはならなかった
そんなことより世界一カウボーイハットの似合う男が
自身の原点となる風景を色濃く残したメキシコを旅する映画である
マイクを演じるのは、やっぱりイーストウッドしかいないのだ

映画の中で愛犬の調子が思わしくない夫婦の相談に
「残念だが歳にあらがうことは出来ない。のんびりさせて
一緒に眠ってやると良い」と告げるシーンがある
上手く言葉では理由が説明できないのだが、このシーンは
ただのセリフと流すことが出来なかった

今でも会社で飼っている14歳のラブを撫でている時、そのシーンを回想している

 

 

今年の映画

今年の映画

ここ半年ほど映画の記事が書けてないが
実は今年はこれまでで最も映画を鑑賞した年だったと思う
今年に限りきちっと記録を取り切れてないのだが
150作品は超えているように思う

只、鑑賞形態も大きく変わった年であった
これまでは、ほとんどが劇場かDVD、BRだったが
今年は6割強が動画配信サイトである
コロナの影響も多少はあるのだが、その手軽さに
慣れてしまった結果のように感じたりもする

私を含め、多くの人がこのような形態での鑑賞が続くようになると
大好きな映画館が閉館してしまったりしそうなので
来年はもっともっと多く劇場に足を向けたいと強く思っている

さて今年印象に残った作品だが
劇場で鑑賞した作品の中では「パワー・オブ・ザ・ドック」
「ミナリ」、「プロミシング・ヤング・ウーマン」だった

ドキュメンタリー作品では「ブータン 山の教室」
「BILLIE ビリー」が興味深かった

B級系では「アフリカンカンフー・ナチス」や「サイコ・ゴアマン」
など欲望を抑えられず観てしまった
この手の作品は、予告を見た段階では私にとって
とても魅力的に思えてしまうのだ

動画配信で観た作品の中では「ジャングル・ランド」2020年作
「テロ、ライブ」2021年作、「プリズン・ランペイジ」2017年作
が強く印象に残っている

独断と偏見で選ぶ今年の1本は「ジャングル・ランド」2020年作
になった

BILLIE ビリー

BILLIE ビリー

2019年製作のイギリス作品
ジャズシンガー、ビリー・ホリデイのドキュメンタリーである
サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルドと並び
女性ジャズ・ボーカリスト御三家の1人に数えられるビリー・ホリデイだが
私は3人の中では、最も好き嫌いのわかれる個性的なボーカルだと思う

この作品の骨格となったのは膨大な資料である
その資料を集めたのは、ビリーのファンである伝記作家のリンダだった
彼女はビリーと関係のあったアーティスト、いとこや友人、ポン引き、更には
ビリーを逮捕した麻薬捜査官や刑務所の職員まで幅広い対象者に10年もの歳月をかけ
インタビューを重ねた膨大な録音テープを持っていた
これらは、リンダ自身がビリーに関する本を出版するための資料と
なるべきものだったが、リンダは1970年に不慮の死を遂げてしまった
そのリンダの資料が近年になって発見され、それを構成して作られたのが本作である

自殺でかたずけられてしまったリンダの死も謎に満ちているのだが
彼女の残してくれた資料から浮かび上がったビリーの人生も非常に
ドラマチックで輝かしくもあり、孤独で寂しくもあった

ビリーが生きた禁酒法時代の黒人女性への差別や偏見は
私などには到底わからないが、ほとんど選択肢のない中で
生きることに命がけでなくては生きてはいけないような
切羽詰まった状況だということだけは伝わってくるものがあった

あの独特の歌い方の中には、彼女の人生の経験が垣間見ることができると思う
それだからビリーの歌は多くの人を引き付けるのだろう
優しい音を出すアーティストが好きだったというビリーだが
心のどこかでは穏やかな暮らしに憧れていたのだと思う
でも、もし穏やかな暮らしをしていたらあのように歌えなかっただろう…
人生は難しい