シークレット・ミッション

シークレット・ミッション

2014年に公開された韓国映画
韓国映画に多い要素で構成されてはいるが、この作品は
今まで観てきた作品とはちょっと違っていた

題材としては、毎度お馴染みの北と南ものであり、北のスパイの話である
ここまで言うと、「またかよ」といった気持ちになる人は
かなり多いのでは?と思う
もはや韓国映画の中で「北もの」と言えばひとつのジャンルに
なりそうなほど作品数は多い
そしてその中でも、北のスパイが韓国に入ってくる話は非常に多いのだ
本作品もそこに当てはまる題材なのだが、ストーリーは私の勝手な予想と
違う方向に進んでいった

北朝鮮からエリートスパイが南に潜入する
そして田舎町でバカになりすますよう命じられ、生活を送るリュファン
彼は貧民街で街の動きや住民を観察しながら母国からの
作戦実行命令が下される時を待っている
しかし命令が下されるまで2年の時が流れ、次第に韓国の生活にも慣れ
そして、貧しいけれど優しい人々に囲まれ暮らすうちに
南に対する敵意も薄れていってしまう
特に口は悪いが、実の子供以上に愛情を持って接してくれる叔母さんへの
感謝の気持ちが大きい

やがてリュファンと同じく命令を待つ仲間達が、街に揃いだしてくる
そしていよいよ作戦実行の命令が下されるのだが
これがまた受け入れがたいものであった
その命令とは、「直ちに自決せよ」なのだ

そして結果、命令を飲まなかったリュファン達3人は北から送り込まれた
自分たちを教えてくれた教官と戦うのであった

前半のほのぼのとしたシーンとは、まるで違う後半の緊張感に
驚かされてしまう映画だった
このあたりのストーリー構成が斬新で、今までの作品と違うところだと思う

叔母さんがリュファンのことを息子と呼んでくれていたことを
コツコツと貯金してくれていた自分名義の通帳を見て初めて知るのだが
このシーンには泣かされてしまった

ほのぼのとしたところもあり、アクションもあり
感動するシーンもある秀作だ

本屋さんのダイアナ  柚木 麻子

本屋さんのダイアナ  柚木 麻子

柚木さんの作品は、これが2冊目である
初めて読んだ作品「私にふさわしいホテル」が面白かったので
何か別の作品を読みたくなり、この本を選んだ

芥川賞候補作はほとんど読まない私だが、直木賞候補作については
こまめにチェックしている
直木賞には、まだ残念ながら選ばれていないが、ここのところ
柚木さんは直木賞候補の常連になっている
この作品も第151回直木賞の候補に選ばれていた

そんなところが現在、高い質の作品をコンスタントに発表し続けている
作家の一人であることの証明になっていると思う
私の住む静岡県独自の賞で、静岡書店大賞という賞があるのだが
この作品は、その第3回静岡書店大賞の小説部門で大賞に輝いた作品である

さて、ストーリーだが
金髪の小学生、矢島大穴(ダイアナ)と優等生の神崎彩子の出会いから
二人が大人になるまでを描いている
しかし、いわゆる一般的な友情ものとはだいぶ趣が違った感じだった
キャバクラ勤めの母ティアラと二人暮らしで、安アパートに暮らす大穴
一方、彩子は裕福で優しい両親に大切に育てられた
一見、この二人に共通するところはなさそうだが、本が好きという共通点があった
小学三年の新学期に同じクラスになった二人は本の話をきっかけに
一気に仲良くなるのだった

とても面白かったところは、互いに相手の当たり前の行為が、もう一方からは
とても新鮮でかっこよく感じる様が、いくつも描かれている点である
確かにコーラやハンバーガーなどは、一度も食べたことのない人にとっては
凄い憧れだろうと思う

そんなユーモラスな対比がずっと続いていくのか?と思っていたら
境遇は相変わらず違うが、二人が自分の意思で強く変わっていったところが
この作品の最大の特徴だろう
その時、二人の原動力となったものが、本好きの二人が幼い頃読んでいた
大好きな「赤毛のアン」や架空の作品「秘密の森のダイアナ」だというところが
ストーリーを厚いものにしている

最後はどんな話になっていくのか?
私はある程度のところから、そのことが気になりながら読み進めてのだが
最後はごく普通に、二人の間にもう一度友情が芽生えるといった
前向きな終わり方だった
これからの二人を想像してしまうような、上手い終わり方だと思った
主人公の名前は、大穴をダイアナと読ませると決めた時には、もうストーリーの
骨格が出来上がっていたのでは?と思わせるほど名前とストーリーが
よく合っていると思った

この作品の読者レビューを読んでいたら、「泣ける話でないのに最初から
最後まで泣いて読んだ」と書いた人がいたが、私にもその気持ちが
よくわかるような不思議な魅力を持った作品だと思えた

ベートーヴェン   遥かなる恋人に寄す

ベートーヴェン   遥かなる恋人に寄す

今年はコロナ禍の影響で演劇やコンサート、展覧会や映画館などは
計り知れないほどのダメージを受けた
ようやく夏位からは3月~6月ほどではなくなったが
依然として正常とは程遠い状態が続いている
最近になり、また感染が増えてきたので、新たな制限が
始まりそうな感じさえある

いつもなら年に何度かコンサートに出かけている私だが
今年は、このコンサートが初めて聴いたコンサートだった
演劇に至っては、結局今年はまだ一つも観ていない
展覧会や映画館には7月くらいからボチボチ行き始めたが
演劇やコンサーに関しては、自分の中では
もう一段(警戒が)高いところに思える
生業としている関係者は、本当に大変だと思う

そんな大変な2020年であるのだが、世界中の人が知っている
偉大な音楽家であるベートーヴェンの生誕250年にあたる
おそらく、世界中でたくさんのイベントが予定されていたことだと思うし
日本でもあちこちで記念のイベントが予定されていただろう
その中には延期でなく、中止になったものも少なくないと思う

私はこのコンサートともう一つ浜松市楽器博物館の企画展
「ピアノの謎・人物の謎・名曲の謎 知られざるベートーヴェン」を
観たことで、何とか生誕250年を感じることが出来た

自らもピアノの名手であったベートーヴェン
彼の前の時代には、ピアノに似たものはあったが、ピアノはまだ(少)なかった
だから、前の時代の作曲家と差別化を図る意味でも積極的に彼は
新しい楽器であるピアノのための曲を作った
彼のピアノソナタを、そのままピアノの歴史と言っても過言ではないという人も多い
楽器博物館の展示では、ベートーヴェン前後の時代のピアノ(似た楽器を含む)の
展示が見どころとなっていた

そしてこのコンサートである
会場のA0Iでは、定員の50%をMAXとして行われ、ほぼ満員だった
ピアノ・ソナタ第14番(月光)から始まり、朗読や連作歌曲があり
最後は、ピアノと管楽のための五重奏曲で終わったのだが
ベートーヴェンの代表作をつまみ食いしたようなコンサートになっていた

私は連作歌曲を歌ったバリトンの声がとても記憶に残っている
このようなプロの歌声を聞く機会が少ない私にとって
その肉声の迫力は、とてつもなくインパクトのあるものだった

このコンサートの前に関連講演会が開催された
そこで聞いたのだが、ベートーヴェンのチェロのための大協奏曲
(三重協奏曲)が非常に難曲だという
チェロが好きな私は、今度是非聞いてみたいと思ったのだった