ピースブレーカー

ピースブレーカー

2017年制作の中国映画
ここのところ一昔前とは考えられないくらい
バリエーションに富んだ作品が制作されるようになった中国映画
この作品もそんな感じで、欧米諸国の作る映画のようだった

韓国映画「最後まで行く」のリメイクであることも中国映画っぽくない
リメイク作を撮ったりすることも、これまであまり聞くことはなかったように思う
ここ最近、中国映画が大きく変わってきたことは実感する

舞台はマレーシアの首都、クアラルンプール
ガオ刑事は雨の中、亡き母の通夜へ向かうため
斎場に向かって車を走らせていた
酒を飲んで運転していたガオ刑事は、大きな曲がり角のところで
自身の前方不注意で歩行者の男性を轢き殺してしまった

最初はうろたえたガオ刑事だったが、徐々に冷静さを取り戻すと
周囲に目撃者のいないことを確認し、事故の不始末を隠すため
死体を自分の車のトランクに積み、目的地である斎場へ再出発するのだった

私は最初のこのシーンで、かなり引き込まれた
ガオ刑事にあまり正義感がなく、むしろ悪徳刑事に思えたところも
ちょっと意外な展開に思えた
ここから先どうなってしまうだろう?まったく読めないストーリーだが
この先、死体をめぐって様々なことが起きることだけは確かだと思った

実際その通りで、ひき殺した死体は、後日ガオ刑事たちのチームが担当する
国際麻薬事件の捜査線に浮かび上がった麻薬の調達をしている男だったのだ
そしてあの日の事故は、通りに設置された監視カメラにしっかりと
写っていることも判明した
更にガオ刑事の携帯には何者かから、トランクに積んだ男を引き渡せと
脅迫電話がくるようになった

捜査とは別にいくつもの難題が襲い掛かってきたガオ刑事は
自身の罪を逃れるために奔走する
窮地に追い込まれたガオ刑事は、ひき殺した男を自身の母の墓に
埋めていたのだが、遂に墓を掘り起こし、男を引きずり出した
そして男の遺体に2発の銃痕があることに気づいたのだった

保身のため戦うガオ刑事が本当にタフで強いのだが、実際人間
こういった時がもっとも強かったりするのだろうなどと、いつもと違い
ちょっと不思議な感じで観ていた
最後に辞職はしたが、元ガオ刑事が貸倉庫の大金を得るのを見たら
ますますそんな気持ちになってしまった

 

PLAY 25年分のラストシーン

PLAY 25年分のラストシーン

昨日書いた「行き止まりの世界に生まれて」とはちょっと違うが
この作品も時間軸が重要なテーマになっている作品である
「行き止まりの世界に生まれて」は、12年間を実直に映し出す
正統派ドキュメントだったが、この作品は25年間をあたかも
現実のように作り上げたストーリーである

主演は、フランスの人気コメディアン、マックス・ブーブリルが
主人公のマックスを演じている
そして盟友であるアントニー・マルシアーノ監督のアイデアに
惚れ込み、共同で脚本も手掛けている

動画も写真も同じだが、作品を撮ったその場から
そこに写された映像は過去のものとなる
その過去の映像を確信犯的に作り上げて、25年分の歴史を作りあげ
映画にしてしまったのがこの作品である
このアイデアは、映像の特徴を生かしたとても素晴しい作戦だと思った

舞台は1993年のパリ
主人公である13歳のマックスは、両親からビデオカメラを贈られた
大変喜んだマックスは、この日から自身の身近なものである家族や
幼なじみのエマ、マチアス、アルノーたちとの他愛ない日々を
撮り始めるのだった

やがて動画オタクのようになったマックスは、何処に行くにも
ビデオカメラを携帯し、いつも映像を撮るようになった
25年の間に撮りためた膨大なテープを整理した時に
そこにはマックスと仲良し4人のかけがえない青春の日々が
リアルに記録されていたのだった

38歳になったマックスは、その映像に写されたダメな自分を
見つめなおす
そしてそれまでの後悔だらけの人生に終止符を打つべく
未来を変えるために決断した

この作品を観ていると不思議な感覚になる
ホームビデオの映像がリアルで、本物の当時の映像に思えてくる
さらにそこに移された役者も、リアルな過去の本人のように思えてきてしまう
監督は、時代の空気感を再現するために90年代のビデオ画質に
近づける工夫をしたり、あえて聞き取れないセリフを入れるなど
色々と試みたというが、上手くできていると思えた

ストーリーのラストがとてもきれいに出来ているところは
好き嫌い分かれるかもしれないが、私は幸せな気持ちにさせてもらえた
とっても好きな作品だ

行き止まりの世界に生まれて

行き止まりの世界に生まれて

昨日ここに書いた「mid90s  ミッドナインティーズ」と
ほぼ同時期に、この作品も鑑賞した
どちらもスケボーをする若者を通して時代が見えてくるような作品である
私にとってどちらの作品も、予想以上に素晴らしい作品であった

「mid90s」は、1900年代のロサンゼルスが舞台だったが
この作品は2000年代のイリノイ州ロックフォードが舞台である
そして「mid90s」は、半自伝的な作品だったが、この作品は
ドキュメンタリーである
さらにこの作品、第91回(今年の)アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門に
ノミネートされていた作品である

監督はビン・リュー
自身もロックフォードで育ち、主要な登場人物としてこの作品に登場している
この作品の最大の特徴は、小さな町に住む若者3人(自身も含む)の
リアルな12年間を描いている点だろう
ビン・リュー監督は、当初映画を撮ろうとしてなかったと思う
興味本位で仲間のスケボー動画を撮っていたように感じる
だから撮る側も撮られる側にもまったく緊張感がない
それどころか映画の中の言葉は、芝居のセリフではないので全く嘘っぽくない

撮影地がイリノイ州ロックフォードであったことも作品の価値を
高めていると思う(ただ住んでいた町だったという理由でこの町を撮ったのだが…)
かつて鉄鋼や石炭、自動車産業で栄えていたが、現在は衰退し“全米で最も惨めな町”と
称される人口15万人の小さな町
この町の12年間が作品の中にしっかりと収められている
記録的な要素も興味深いのだ

ここからになったが、突然あらすじを簡単に…
ロックフォードに住む貧困と暴力が日常の家庭で育った3人の若きスケーターを
12年間追いかけた作品である
3人はアジア人、白人、黒人と人種も様々なスケボー仲間だった
3人とも最初は、スケボーに逃げてるようなところもあったが、12年の間に
家庭を持ったもの、家を出て自活したもの、親と和解したものと
皆それぞれ成長していった

この作品にはドキュメンタリー作品の良さが凝縮されている
12年間の間に仲間が、自分がどう変わっていったか?
故郷ロックフォードがどのように変わったか?が、説明不要で
観る側に伝わってくる
「事実は小説より奇なり」とは、よく言ったものである
とても正直でストレートな作品である