ハニーランド 永遠の谷

ハニーランド 永遠の谷

2019年、北マケドニア制作のドキュメンタリー作品
北マケドニアの映画を観るのは、たぶん初めてだと思う
まず、どのあたりにある国だろうか?それすらわからないので、調べてみた

北マケドニアは、東ヨーロッパのバルカン半島に位置する共和国で
前身は、ユーゴスラビア連邦の構成国の1つである
南はギリシャ、東はブルガリア、西はアルバニア、北はセルビアとコソボと
いった具合に、四方を外国に囲まれた内陸国である
西マケドニアという呼び名の地名もあるようだが、国名ではなく
ギリシャ共和国の広域自治体であるペリフェリア(地方)のひとつである
映画の中の風景が、どことなくアジアっぽいと勝手に思っていた私は
この国の位置を確認した時に、ちょっと納得出来た気がしたのであった

この北マケドニアに暮らす自然養蜂家の女性を追ったドキュメンタリーである
この作品は大変評価が高く、第92回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞と
国際映画賞(旧・外国語映画賞)にノミネートされた
この二つの賞に同時ノミネートされた作品は、過去にもこの作品の
他にはないのだという

周囲に全く人の住んでなくなってしまった山奥の廃墟のような場所
ここに体の不自由な母と二人だけで住んでいる女性養蜂家の日々の暮らしを
追ったドキュメンタリーなのだが、とてつもなくシンプルに
暮らすこの女性を、そっくりそのまま撮影したような作品である
まず、めったに見ることのできない映像であることだけは間違いないだろう

電気も水道もない暮らしは、ものすごく不便に感じる
言い方を変えれば、より自然に合わせた暮らしを強いられる
しかし、この暮らしこそが究極のエコなのだと痛感させられる
この女性の環境を壊さない自然への配慮や、ハチたちに無理させない
蜂蜜づくりにもこの精神は表れていた
そして「半分は自分に、半分は蜂に」の共存する信条にも同じように
一貫したものを感じられる
簡単なようで実は最も難しいことを実践しているように思えた

映画の中でも、それなりの変化は起きるのだが
何か起きることが前提の映画ではないので、淡々と過ぎていくような日々が
少し退屈に感じる人もいるだろう
しかし、このドキュメンタリー作品が3年の歳月と400時間以上の
撮影の中から集められたものであることを聞かされれば
その膨大な日々の重みを、しっかりと感じ取ることが
できるはずだと思えた

これも五十三次 パート3

これも五十三次 パート3

静岡市東海道浮世絵美術館の展示である
パート2を観に行って、自分の近くの宿場町を見ることができたので
このパート3は観なくてよいかとも思っていたのだが、ここのところ
天気が悪く、屋外で行う予定が立たないこともあり訪れてみた

今回の展示は、藤川(愛知県岡崎市)から終点の「京」までである
前回も書いたのだが、広重が手がけた東海道シリーズの内
「東海道五拾三次」(通称:狂歌入東海道)、「東海道」(通称:隷書東海道)、
「東海道五十三次之内」(通称:行書東海道)の3シリーズを宿場ごと
3期に分け展示したそのラストの展示である

ちょっと眺めるだけでも、名物桑名の焼き蛤や
池鯉鮒という字が現在愛知県知立市の昔の呼び名だったりと
今まで知らなかった発見が結構あった

その中でも水口宿(滋賀県 湖南市)のウツクシマツは調べてみると
今も浮世絵と同じ形で、根元近くから幹が放射状に分かれて上方へ伸びていて
一般の松とは明らかに形状の違うものだった
この場所は昔から東海道を往来する人々に松の名所として知られていて
「美し松」と呼ばれていたという
そしてこの松は、1921年(大正10年)に国の天然記念物に指定されている
今でも大切に残されていることがわかると何だか嬉しく思えた

そしてこの日最大の発見は、四日市の浮世絵である
毎月四の付く日に市場が開かれたことが、四日市の名前の由来であるということも
今回初めて知ったのだが、隷書東海道に書かれた犬(シロ)の
物語は初めて知る話だった

この絵の鳥居の前に描かれている犬(シロ)は、おかげ犬である
「おかげ犬」とは、体が弱いなどの事情により
ご主人の代わりに、伊勢神宮を参詣したと言われている犬のことである
最初は近所でおかげ参りに行く人に、一緒に連れて行ってもらっていたが
そのうち犬だけで、自宅と伊勢神宮を往復するケースも出てきたようである
誰からも代参だとわかるように、犬に道中でかかるお金や伊勢参りをする旨を
書いたものをしめ縄でつけていたというのだ
こんな利口な犬がいたことを初めて知ったが、ビックリである

シロは福島県に住んでいた
昔から近所では、利口で評判だったシロだが、ある年ご主人が病に倒れ
毎年恒例であった伊勢参りができない状態になってしまった
そこでシロが代参することになったのだ
こうして旅だったシロであるが、出発してから約2か月後に
無事ご主人の代参を務め、家に戻ってきた
今でも福島県須賀川の十念寺には、代参をしたと言われている「シロ」に
まつわる犬塚が残っているという

何だかロードムービーになりそうな話だと思えた
タイトルは「ハチ」を意識して「シロ」でどうだろうか? 安易すぎだろうか?
一枚の浮世絵からこんなにも素敵な話を知ることができた

追龍

追龍

2017年製作の中国・香港合作映画である
そしてアジアの2大スターであるドニー・イェンとアンディ・ラウの
初共演作品でもある
監督はどちらとも友人だというバリー・ウォン
彼は日本公開時の来日を強く希望していたが、新型コロナにより
断念せざるを得なかった

近年アジアの映画シーンでは、ダントツに韓国が目立っており
かつてアジア映画を牽引していた香港映画は、ここのところ元気がない感じがする
今から35年以上前に「男たちの挽歌」で一気に人気に火が付いた香港ノワール映画
この作品はその時代のクラシカルで伝統的な作品に通じるような作品である
だからこそバリー・ウォン監督は、それらの時代を知る日本の観客の
反応を楽しみにしていたのだと思う
そんなところからも監督の自信を感じた映画である

まず映画の感想に入る前に、ポスターについてだが
最初見た時私は、何か古臭くて正直ダサい感じがした
しかし、作品を観終わった時には、その狙いが分かった気がして
懐古的で逆に新鮮にも思えたのである
変わり身の早さに自分でも笑えてきた

ストーリーは1960年代の英国領香港が舞台である
英国人による統治組織は、汚職と人種偏見に満ちていて
適応できた香港人のみが、彼らからの恩恵を得ることができた
警察もマフィアも同じで、英国人への適応こそが生きる道であった

その時代に実在した香港マフィアのボス、ン・シックホー(ドニー・イェン)と
警察署長ルイ・ロック(アンディ・ラウ)に焦点を当て、当時の汚職が
蔓延した警察とそんな警察とつながっていた黒社会、更には
欲深い英国人たちの関係を描いている

まず感じたことは、凄くカッコイイ作品である
特にオープニングから数分間の映像が良いので、そこから引き込まれた感じだった
そして、かつて香港のランドマークとして知られ、悪の巣窟であった
九龍城砦を再現したシーンは、特に見ごたえがあった
警察とマフィアという正反対の立場にあった二人だが、その間に生まれた情を
大切に生きる姿が観る側も十分に感じ取れるので
深く感情移入させられてしまう感じだった

ふたりの人生の最後を比べると、好みは分かれると思うが
私はシックホーの人生の方に惹かれるものがあった