カフーを待ちわびて

カフーを待ちわびて   原田マハ

少し前に「キネマの神様」を読んで面白かったので
2冊目の原田マハ作品となるこの「カフーを待ちわびて」を読んでみた
本作が作者の小説家デビュー作だという

この作品は2005年に、第1回日本ラブストーリー大賞を受賞した
そしてエイベックスが映画化し、2009年春に公開されている
本も読んでなく、映画も観てない私でも作品名が記憶にあるのは
きっと受賞したときや映画化されたときに話題になったからだと思う

日本ラブストーリー大賞って何だろう? 調べてみた
宝島社の主催するラブストーリーだけを募集する文学賞だったようで
第10回(2014年)を最後に、現在は停止中である
どんな作品が集まっていたか?は、わからないが、勝手な想像をすると
応募作品全部に目を通す審査員が大変そうな賞だと思ってしまった
第3回まで大賞作には、エイベックスによる映画化検討が付いていたようだ
いかにもエイベックスらしいちゃっかりさに、何だか笑えてきた

ストーリーは沖縄の与那喜島が舞台になっている
聞いたことのない島の名前だったので調べてみたのだが、実在はしない島だった
この島で雑貨屋「友寄商店」を営む友寄明青(ともよせあきお)が主人公である
近所の人たちと北陸を団体旅行した際、彼は縁結びの神様で有名な神社の絵馬に
「嫁に来ないか 幸せにします」というメッセージと共に自分の名前と
島名を書き、神社に奉納してきた

それから4カ月ほど経ち、明青はいつものように夕食の後
郵便受けをチェックしてみると、1通の封筒を見つけた
読んでみると、何と面識のない女性から明青の書いた絵馬を見て
明青と結婚することを決めたことと、近日中に島を訪れると書いてあった

当然、にわかには信じられなかった明青だったが
3日後に自宅から浜辺へと続く道の途中に立つガジマルの木の下で
白い帽子とワンピースの女性から声をかけられるのだった
彼女こそが手紙の差出人である女性、幸(さち)だった
そしてその日からひとつ屋根の下で彼女との共同生活がスタートするのだった

この不思議な始まり方に、私はかなり引き込まれた
そして展開もまるで読めないので、先に先に急がされる感じで読み進めた
途中までは本当に楽しめたのだが、後半に勘違いで幸を追い出した全容が
明らかになった時は、私的にはかなり残念に思えた
ストーリー的には、明青の友人の俊一が自身の仕組んだ女性と幸が
別人であることを知らなかったというオチは、あまりに無理すぎるだろう

途中までは本当に面白い作品だっただけに、ラストにかけては
ちょっと違わないか?という気持ちが強く、個人的には少し残念だった

これも五十三次

これも五十三次 ~広重が描いた三つの東海道~

浮世絵を見ることの好きな私にとって東海道広重美術館は
毎年何度か訪れるような、なくてはならない場所である

もう15年以上前であるが、広重の東海道五十三次の浮世絵を
何か購入したいと真剣に考えていた時期がある
その時は結局購入しなかったのであるが、このことについては
今になっても、とても後悔している
もはや今となっては、市場に県内の宿場町の浮世絵が出回ることは
本当に少なくなってしまった
たまに沼津や原などが出てくることもあるが、状態のよさそうなものは
100万円凸凹の値がついており、私には手が出ないものになった
浮世絵の市場は15年前とは、だいぶ様変わりした

この美術館では、美術館名にもなっている広重をはじめとする
たくさんの浮世絵を見ることが出来る
展示は、毎回工夫を凝らした何かしらのテーマがあるので
いつも新鮮な気持ちで鑑賞できる
入場料も520円と安めなのも大変ありがたい

さて、今回の展示は彼の代表作の東海道五十三次である
もっとも有名で、一般的によく知られているのは「保永堂版」と
呼ばれているものであるが、実は広重は生涯にわたり20種以上の
東海道シリーズを描いている
この美術館はそのうちの10種を所蔵しているというが、その中から
「東海道五拾三次」(通称:狂歌入東海道)、「東海道」(通称:隷書東海道)
「東海道五十三次之内」(通称:行書東海道)の3シリーズを
宿場ごと3期に分け、展示している

私が観たのは、パート2江尻宿から赤坂宿までの展示であった
会期全体のスケジュールに変更はないのだが、コロナの影響でパート1の
会期が延びたため、その後の各会期も変更になっている
パート1の日本橋~興津は観たかったのだが、観ることはできなかった
3月31日~6月14日と長い会期に思えるが、閉館していた時期があるので
実質の鑑賞期間はかなり短かったはずである
残念だが仕方ない

このパート2の展示にも静岡県の宿場が多いので親近感があり
いつもと同じで、かなり細部までのめりこむように観ていた
神奈川と静岡の宿場の絵には、海や川が題材のものが多いとつくづく感じた
 
そして日坂宿には、夜啼石が描かれていた
少し前、私はこの辺りを歩き、この石を撮ったことが蘇ってきた
そしてその時、東京から週末を使って東海道を歩いている人たちと出会い
この日坂宿で話をしたことを思い出したりしながら観ていた

ぶたぶたのシェアハウス

ぶたぶたのシェアハウス   矢崎存美

このぶたぶたシリーズは大変人気が高いようで、この作品が
最新作であるのだが、何と31作目なのだという
このシリーズの存在は前々より知っていたのだが
かわいらしいぶたぶたさんの表紙絵が、おじさんには少し抵抗があり
私はこれまで1作も読んだことはなかった

この作品は今年1月に発行された現在の最新作である
この本を見かけたときは不思議とそれまでの抵抗は感じなかった
むしろ自分の顔ほどの大きさのおにぎりをにぎるぶたさんが
かわいらしくさえ思えた
これは、「お前も我慢などせずに、そろそろ読んでみろ!」という天からの
サインではないだろうか?と勝手に思った私は、チャンスとばかり、急いで
レジにこの本を持って行ったのだった

前知識がゼロの状態で、しかも予習もしてなくシリーズ第31作の
最新作からいきなり読むことには、多少の不安はあった 
しかし、実際読み進んでいくと、その不安は取り越し苦労で
あったことに気づかされる
どこから読んでも理解できそうなストーリーとなっており
説明も丁寧で的確なので、情景やイメージが掴みやすく
感情移入も共感もしやすかった

最初こそ主人公の山崎ぶたぶたの余計なこと(ストーリーとは別の
彼についての根本的な情報)が、気になって仕方なかったのだが
やがて初めてで、しかも最新作から読む私にそれを知ろうとしても
無理なことだと諦めた
そして彼を受け入れるしかないことを悟ると、何だか晴れ晴れとした
気持ちになってストーリーに集中できた

人間の世界にさも当たり前かのように、命を持っているぶたのぬいぐるみが
混ざり、一緒に生活しているというこの斬新な世界観
本の登場人物たちが、初めて山崎ぶたぶたに逢った時のリアクションが
そのまま読み手にまで伝わってくる感じが新しく感じられ、面白かった
そして登場人物たちが、やがてぶたぶたさんに慣れ始めると、これまた同じように
読むほうもぶたぶたさんの存在が、普通に思えてくる感じだった
登場人物と読者が、ぶたぶたさんに関して共感しているような感覚は
あまり感じたことのない感覚だった

時にギスギスしてしまう人間の世界に、この意表を突くような
ぶたぶたさんが登場することによって、弱った人を元気づけたり
傷んだ心の緩衝材になっていたりする話を読んでいくと、このシリーズの
人気の理由が理解できたのだった