ショーケン  最終章

ショーケン  最終章

今日3月26日はショーケンの命日である
去年の3月26日に68歳で亡くなった
この一年の間に、私はショーケンに関する3冊の本を読んだ

おそらく誰も憧れる俳優や歌手の一人や二人はいると思う
私の中で最も憧れた人が萩原健一、ショーケンである
自分の若い時に深夜の再放送で観た「傷だらけの天使」の
ぶっ飛んだ木暮修にヤラレ、その後「前略おふくろ様」の
照れ屋で純朴な片島三郎に、完全に感情移入した
どちらも再放送であるのに、その当時リアルタイムでやっていた
ドラマなど見る気も起きないほど夢中になったことを覚えている

歌手としてのショーケンも大好きで
渋いBOROの歌や映画「竜二」のエンディングだった
「ララバイ」なんかもすごくかっこよかった
決して上手ではないと思うが、役者と同じで非常に個性的で
かっこよい歌い方をしていた

ショーケンの最後の自叙伝がこの本である
自身の病気と余命を知っていた彼が、これまで自分が言いたくても
言えなかったことを書き残した本である
この本はショーケンが亡くなってから出版された

一時代を築き上げたスターからいつしかトラブルメーカーとして
腫物扱いされていった
大麻、恐喝などの事件で仕事を干された時期のこと
再婚し、やがて昔の映像仲間から少しずつ仕事に復帰していったことなど
知らなかった色々な事実が自然体の文章で書かれていた
その文章から最後まで映像作品へのまっすぐで熱いこだわりと
努力を惜しまない姿勢が伺えたし、信頼関係から仕事を紹介する側の本気度も見える

もうだいぶ昔になるが、こんなことがあった
たまたま飲み屋で「太陽にほえろ」の映像関係の仕事を
していた人の隣になったことがある
その人に当時のことを飲みながら教えてもらえたのだが
現場で次々とショーケンから提案される演技の
アイデアは本当に天才的だったと話してくれた
そのような若手俳優は後にも先にも全くいなかったという

実際ショーケンが亡くなった時に、あの倉本聰さんもセリフのアドリブを
全く禁止したのにも関わらず、これと似たようなことをおっしゃていた
そしてこの本からも、ひしひしと本物の役者の感性が伝わってきた

この本の表紙の写真のショーケンの表情がとてもいい
穏やかな老人となったショーケンも映像で見たかったと
只々思う私だった

萩原健一  傷だらけの天才

萩原健一  傷だらけの天才 (文藝別冊)

ショーケンが亡くなられた後に出版された本である
この本は、ご自身が語っているというより澤地久枝さんが
聞き手となったインタビューと、あの黒澤明監督との対談の他は
ショーケンと付き合い多かった様々な業界人が、ショーケンについて
語った内容を文章化したものが主となっている本である

それら多分、ショーケンが亡くなった後に語られたと思う
亡くなったことについても語られていることからそうだろう
亡くなられてから半年後に出版されているので、時間的には可能である
ある意味ショーケンが生きているとしゃべれないことや否定的な意見も
亡くなった後であれば正直に話しやすいとは思える

そんなことで、この本自体がとても興味深い内容なのだが
その中でも特に面白いと思った章は、黒澤明監督との対談である
名前は当然知っている大監督であるが、それ以外のことは
私は、ほぼ無知識である
まだ若く、生意気な頃のショーケンが恐縮しまくっているところも
面白いが、黒澤監督の受け答えが素晴らしいと思った
投げかけられた質問に対し、端的で的確で面白い回答が返ってくる
しかも、普通の人が決して経験できないようなご自身の経験談まで
付けたりして、とても丁寧に返答していた
この対談を読んだだけでも、やっぱりすごい人だったのだな~と
今さらながら思ったのだった

ショーケンについて業界人が書かれた中では、映画プロデュ-サ-の
奥山和由さんの話が興味深かった
ショーケンのピークが「傷だらけの天使」と「前略おふくろ様」だったと
いう衝撃的な話であったが、結果論だと私も同じように思えてしかたない
奥山さん自身その頃、リアルタイムでショーケンのカッコよさに相当
しびれていたことがよくわかる文章だった

確かに間違いなくこのタイプの違う2作品の中の
ショーケンは最高にかっこよかったと思う
この鉄板2作品は、今見てもやっぱりかっこいい作品である
このブレークを機に彼は時代の先頭を走ることになるのだが
その後のプレッシャーとの戦いは、すさまじいものだったと思う

音楽仲間であった速水清司さんの話も面白かった
長い間にわたり音楽活動を一緒にやってたのだが、速水さん自身が
ショーケンを大好きだったことがとてもよくわかる内容だった

もちろん敵も多かったと思うが、身近にはショーケンが大好きな人々に
囲まれた幸せな人生だったことが伺える作品であった

不良のススメ 瀬戸内 寂聴、萩原 健一

不良のススメ    瀬戸内 寂聴、萩原 健一

不良と呼ぶとちょっと違うように思うのだが、生きることに
大真面目なのだが、上手に生きることのできないショーケンと
そんなショーケンが大好きな瀬戸内さんのほのぼのとした
対談からこの本は始まる

瀬戸内さんはドラマ、映画やコンサートまでショーケンに関わる
作品を実によく見ている
そして本人から感想を求められると、率直な意見を述べてくれる
ショーケンの役者としての才能が、与えられた特別な人にしか
ないものだと言い切る
正に瀬戸内さんは役者としても、一人の人間としてもショーケンの
熱烈なファンなのである

大麻事件で捕まった頃、ショーケンは実の母親を亡くしている
その時、自分が母親のために何もできなかったことをその後ずっと
後悔して生きている
だから大麻事件の判決が下りた後、すぐ母親の供養のために
寺に修業に入るのだった

この本には書いてないのだが、実はその寺でショーケンは
行儀よく修業できずに、無茶苦茶のやり放題で、破門になってしまう
この時ショーケンに寺を紹介したのは瀬戸内さんだ
そして入門する際、何十万円もかけて禅宗の衣を全て
揃えてくれたのも瀬戸内さんなのであった
破門となってからしばらくショーケンは、迷惑をかけてバツが悪いので
瀬戸内さんに会えず避けるようにしていたという

その後、自身50代に入った頃、やはり亡くなった母親の供養のため
今度は四国お遍路を2周半も歩いた
3周でなく、半分で終わってしまった理由は足を痛め強制終了となったからだ
このお遍路を行ったことでその後の人生が大きく変わったと
ショーケン本人は言っていた

母親を亡くしたショーケンにとって瀬戸内さんは
母親のような存在だったとよく言っていた
瀬戸内さんは母親というよりは、一人のファンなのだが
出来の悪い子ほどかわいいといったこともよく言っていた
そんな二人のいい関係が伺える作品になっている