1917   命をかけた伝令

1917   命をかけた伝令

私的には最も興味のあった作品である
第92回アカデミー賞では10部門でノミネートされ
最終的に撮影賞、録音賞、視覚効果賞を受賞した作品
作品賞は残念ながら受賞できなかった

この作品の最大の特徴だが、全編ワンカットで作られている点である
文字にすれば簡単に書くことができるが、一体こんなことが
可能なのだろうか?

私には撮影についての技術的な知識はほとんどないのだが
カット割りを繋げて作る映像にはリアル感は薄れると聞いたことがあるし
実際そうだと感じることがよくある
だからと言って全編をワンカットで撮るなんてことが信じられない
正にクレイジーだと思うし、奇跡的なことだと思う

当然2時間近く撮影し、最後の数秒でNGを出してしまったら
また最初から撮り直しといった世界である
想像しただけで、映画と関係ない私の手からも汗が出てくるようだ
想像を絶する緻密な計算と、膨大な稽古の賜物で成り立つ世界だと思う

物語は最初から第1次世界大戦の戦場の最前線である
ある若い二人のイギリス兵スコフィールドとブレイクの2人が
エリンモア将軍に呼ばれるところから始まる
狭い通路をかき分けるように将軍に会いに行き、そこで撤退したドイツ軍を
追撃中のマッケンジー大佐の部隊に重要なメッセージを届ける任務を与えられた
この部隊にはブレイクの兄も所属しており、総勢1600人の命がかかっている
翌朝に追撃が開始されれば、待ち伏せしているドイツ軍に一網打尽に
されてしまい、ほぼ確実に全滅してしまう

この大事な任務をすぐに行動に移す二人を追っていくのだが
ここからの臨場感は特別なものであった
まるで同じ任務を受け、彼らの後ろを歩いている感覚であった
だから、よりストーリーに入り込めるし、感情移入も自然だった
全編ワンカットの効果には只々驚かされるばかりだった

「すさまじい体験がしたい」なら、これを見て!という
キャッチコピーは本物だった

フォードvsフェラーリ

フォードvsフェラーリ

第94回アカデミー賞では4部門ノミネートされていた作品で
その時期の話題作の中の1本であった
監督はジェームズ・マンゴールドで
主演はマット・デイモンとクリスチャン・ベールのダブル主演である

この作品はル・マン24時間耐久レースをめぐる実話を映画化している
当時の絶対王者フェラーリに挑んだフォードの男たちを描いている
そんなフォード側をフューチャーした作品である

カーデザイナーのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)は
米国人で唯一、ル・マン24時間を勝ったことのある元ドライバーである
そんな彼はある日、フォード・モーター社の幹部から次のル・マンでの
勝利という無謀に近いような困難なミッションを与えられる
フェラーリに勝つべく、車修理工場を営むイギリス人レーサーの
友人ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)とタッグを組み
フォードのレーシングカーを仕上げることに没頭していくのだった

そこから実際に、フォードがル・マンを制するまでの道のりが
描かれているのだが、実に面白いドラマになっている
そしてレースのシーンは迫力あって、私は何度もこぶしを握り締めていた
監督のこだわりには、「登場人物が運転しているあの瞬間に観客を
引き込むことに焦点を当てた」とあったが、それが十分伝わってくるようだった

そして巨大企業フォードについても組織のリアルさが伝わってきた
ワンマン社長であるフォード2世の無茶ぶり、そして幹部たちの
策略など、実に良く描けていると思えた
この作品を制作するにあたりフォードの協力もあっただろうに
よくここまで貪欲に描いたものだと感心してしまうシーンもあった

最後はやっぱりクリスチャン・ベールが演じたケン・マイルズについてだ
口は悪いが、メカについても運転技術についても非常に能力が高く
何しろ車が大好きな男
このとてつもなく魅力的な男を、これほどまで演じられるとはびっくりだ

この作品4部門ノミネートはされていたが、作品賞以外は
どちらかというと地味な賞である
監督賞、主演男優賞、脚本賞などにノミネートされないことは残念だ
結果、編集賞と音響編集賞の2部門を受賞したが、それでも少しモヤモヤ感が残った

しかし、ル・マンでのまさかの優勝を逃したときのケン・マイルズのように
賞なんてどうでもよいことかもしれないと思えてくる作品だった

 

神様からひと言 荻原浩

神様からひと言  荻原浩

ユーモア系からシリアス系まで本当に広範囲にわたり
面白いストーリーを書くことができる珍しい作家の荻原浩さん
私は好きな作家なので色々と読ませてもらっている
個人的にはユーモア系の話が好きである
例えなどの小ネタも独特で面白いが、登場人物のキャラクターや
話の展開も良く練られていて大変面白い

そして荻原さんの本は売れている(たぶん…)
この本もおしりを見ると2005年3月が初版で、翌年の
2006年12月には何と23刷になっている
過去に読んだ「なかよし小鳩組」や「オロロ畑でつかまえて」なども
短期間の間に何度も増刷を重ねていた
人気作家なのである

この作品はユーモア系に属すると思うが、今まで読んだ作品とは
少し違い、面白くなってくるのは読み始めてからしばらくしてからだった
正直最初のあたりは、どこにでもいそうな若者のどこにでもありそうな話が
続いていて、退屈だったのだが中盤からはグッと面白くなっていった

大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平
入社早々、元大手広告代理店ということを買われ任された販売会議で
トラブルを起こし、リストラ要員収容所として恐れられている
「お客様相談室」へ早々に異動となってしまった
私生活でも金欠の上に、彼女にも逃げられてしまうといった
さえない毎日を送っていた

お客様相談室では個性的な同僚に囲まれ、良くも悪くも刺激的な
毎日を送っていた
仕事を覚えていくと同時に、組織や社会を今までより知ることで
人の見え方が変わり、世の中の見え方も変わっていくのだった
やがて、新商品開発に関するトラブルを調べていくうちに副社長の
不正取引に気づくのだった

ラストは不正取引を会議を利用し、派手に告発するのだが
とても痛快で、頭の中で映像化されるようだった
私的には、スクラッチカードのミスプリントに付け込んだ客が
お客様相談室を訪れたシーンが一番面白かった
凉平の先輩である篠崎のキャラクターがとてもイイ