ボッコちゃん  星新一

ボッコちゃん  星新一

理由はないのだが、最近になって急に昔読んだはずの本を
もう一度借りたり、購入したりして読んでいる
内容を憶えているのなら再読になると思うが、まるで憶えてないので
改めて読んでいるということになると思う
全く記憶にないので、初めて読むのと同じくらい新鮮ではある

この本の発売日は1971年である
既に発表されていたいくつかの作品の中から星さん自身が
選んだ50編が収録されている
あとがきから初期の作品が多いことと、偏らず幅広いジャンルから
選出されていることがわかった
全て50年くらい前の作品ということになる

私の学生時代は課題図書と呼ばれる本があり
夏休みなどは、その中から1作品の読書感想文を書くことが
宿題になっていた
感想文が宿題であって、本を読むことは宿題ではなかったように思う
私はあとがきだけ読んで感動文を書き、提出したことがよくあった
今となっては懐かしい思い出になっている
そんな課題図書の中に星さんの作品は常連だった

50年の時を経ても全く古くなってないということが最初の感想だった
そして面白さも色あせてないことにも驚かされる
さらに凄いのは、今読んでも新しいと思える作品が多いのだ
星さんの観察力や発想やユーモアの感覚は非凡などという言葉では
言い表すのは失礼なのである
宇宙人の話がちょこちょこあるが、星さん自身が宇宙人で他の星へ
帰ってしまったのではないだろうか?とさえ思えてくる

私は表題作の「ボッコちゃん」がとても好きだ
あるバーのマスターが、趣味で女性型アンドロイドを作った
そのアンドロイドの名前が「ボッコちゃん」である
外見は本物の人間と同じで、しかも大変な美人である
しかし知能的には低く、簡単な受け答えができる程度でしかない
そして、動作もお酒を飲むことしかできない

いつの世も同じだが、男というのはバカなので
すぐに美人のボッコちゃんは人気者となり、大勢の客が店に押し寄せ
ボッコちゃんに話しかけては、お酒を飲ませてくれるのだった
そのボッコちゃんのタンクに溜まったお酒を、店のマスターが
こっそりと回収し、客用の酒としてで再利用する話である

不変の名作である

 

奇跡の芸術都市  バルセロナ展

奇跡の芸術都市  バルセロナ展

2019年4月の長崎県美術館を皮切りに姫路、札幌と巡回し
静岡市美術館で開催していた展覧会である
この後は、最後の会場となる東京ステイションギャラリー
で開催予定である

2018年の年末から2019年の新年にかけ、私はバルセロナを訪れていた
一週間の間、ほとんどバルセロナの町の主要な建築物を見て歩く旅だったが
一週間では、とても見きれるような量ではなかった
それから月日があまりが経ってないので、まだ街並みや
みなとの風景などは鮮明に覚えている
そして旅の間に食べた食事がどれもとても美味しかったことも思い出した
日本に帰ってからもオリーブオイルやオリーブの実を
よく食べるようになったのは、この旅の影響である

この展示はスペインの代表都市としてのバルセロナというより
スペイン・カタルーニャ自治州の州都であったバルセロナに
スポットを当てた展示になっている
だから展示されている作品は、19世紀後半の
イルダフォンス・サルダーによる新たな都市計画から、20世紀の
スペイン内戦までの約80年間に生み出された芸術作品に限られている

そして展示作品は、絵画はもちろんのこと建築から家具
宝飾品、工芸作品など幅広いジャンルから約130点が
展示されていた
絵画や宝飾品などは、初めて見る作品ばかりだったが
ラモン・カザスやサンティアゴ・ルシニョルなど「ムダルニズマ」と
呼ばれる芸術様式を代表する画家の描く景色が、私にとっては
とても心地よい世界だった

建築家ガウディの作品「カザ・バッリョー」の中に展示されていた
ガウディの作品である組椅子を静岡でもう一度見ることができて
少しうれしくなった

その「カザ・バッリョー」の隣にあるチョコレートメーカーの建物も
非常に重要な建物として紹介されていた
私はこの建物を修復している現地技術者の解説を聞きながら
普段見ることができない部分も、時間をかけて見学させてもらった建物であった
改めて貴重な体験をさせてもらったことを認識した

あれこれ思っていると、また訪れたくなってきた

ライフ・イットセルフ  未来に続く物語

ライフ・イットセルフ  未来に続く物語

2018年制作のアメリカ映画
監督は「THIS IS US 36歳、これから」の
企画・脚本・製作総指揮を担当したダン・フォーゲルマンが
監督・脚本を手がけている
このテレビドラマは、エミー賞を含む142の賞にノミネートされ
ゴールデン・グローブ賞など38の賞に輝いた大ヒット人気ドラマだという

去年だったか「カメラを止めるな!」が流行ったとき
映画はオープニングの30分が大変重要で、ここで観る側の
心を掴まないといけないが、あの作品はその常識を
覆したなどと言われていた

観終わった時に私は、この作品もこれと同じことが言えると思った
中盤くらいから前後のストーリーの繋がりが見えるようになってくる
そしてそこからがこの作品の面白いところとなっている
つまり、見始めはこの仕掛けと伏線がわからないので
愛し合うカップルの大恋愛を見せつけられているだけの
退屈な感じがしてしまうのだ

しかし後半の面白さは全然違う
前半にちりばめられた謎が一つ一つ解ける度に
奇跡の偶然を感じて胸が熱くなる
そしてラストには全てが繋がり、その運命の糸の長さと細さが
とても愛おしく思えてくるのだった
まるで自分が神様になって2組の家族の繋がりを天から
眺めているような爽快な気分にもなった

映画の中では、ボブ・ディランの数々の名曲が流れ
役者のセリフにも登場するので、多分時代を現すキーワードに
なっていると思われるが、それも洒落てていい感じだった

このパズルのような手法で作られた作品は、まだあまり多くはない
そういった意味では、かなりチャレンジした実験的な作品かもしれない
私は観終わった時の感動が忘れられない作品となった
映画のセオリーに一石を投じた作品になっていると思う