さよなら、人類

さよなら、人類

スウェーデンの奇才ロイ・アンダーソン監督作品
2000年の「散歩する惑星」、2007年「愛おしき隣人」に続く
リビング・トリロジー3部作の最終章にあたる作品だという
私はこれら前作2作は観てないが、最終章にあたるこの作品は
個性的で芸術的で面白かったので機会があれば、前作を是非観たいと思った

そしてこの作品は2014年・第71回ベネチア国際映画祭で
最高賞の金獅子賞を受賞している
間違いなくアメリカでは、こんなに高い評価はされないだろう

構図だったり、構成だったり、小物だったり、色だったりと
特徴のある映画監督の作品は、幾つかのシーンを観れば
誰の監督作品かが大体わかるのだが、この作品もそのような
特徴ある作品に属していると思う

各背景が徹底的に作り込まれていて、それはまるで主役だけが
書き込まれてない無機質な絵画のようである
私は初めて見る監督だが、とても個性的な背景だと思った
同じように個性的な監督であるウェス・アンダーソン監督や
アキ・カリウスマキ監督の作り出す空間とも全く違う
正に独自路線の背景だと思う

そして、そんな個性的な空間で繰り広げられるドラマも
また一筋縄ではとてもいかない
間違いなく言えることは、大人を対象とした作品なのだが
声に出して笑えるコメディーが好きな大人は対象ではないだろう
さらには、声にして笑えないユーモアと演じる者たちが
全く表情が崩れないところが印象的である
どこか不条理を感じるこれらのブラックコメディーと、つくりこまれた
独創的背景が、演劇的でもあると思ったりもした

簡単にシュールと言うだけで、済まされるものか?とても悩ましいし
私には、どこにも落ちがあるとは思えない話もたくさんあった
そして細かな感想も書く気にもなれない話ばかりである
只、当然先の展開は全く読めず、さらに次にどんな話が始まるか?
予想不可能であるので、終始興味深く観ることができた

かなり好みの分かれる作品だと思う

残された者  北の極地

残された者  北の極地

この作品を観終わった時に私は衝撃を受けた
まず登場人物もセリフも極限までに少ない
そして場面もほとんど変わり映えしない白一面の雪景色である
この設定でこれほどの映画を作ってしまうことに
まずその事実に驚かずにはいられなかった

男が一人雪景色の中にポツンといるところから映画が始まる
近くには翼の折れた小さな飛行機があるだけだ
映画の中では、まるで説明が無いのだが
想像通りということだろう
必要最低限の配慮だが、この按排が絶妙なのだ

しばらくはこの遭難した男が、手持ちの道具を使って
知恵を絞り、生き抜くサバイバル生活が描かれていく
SOSの文字を空に向かって書き、釣りをして食糧を得ている
たくさん釣れた時は非常用に保管をしていた
そして無線のようなものを使い、毎日何度か助けを求める

段々男の生活パターンがわかってくると、セリフが
ほとんどないこともあって、私はコクリコクリと
し始めてしまったのだが、そんな私を見ていたかのように
展開が大きく変わり始めるのだった
ここの間も絶妙だと思わされた

途中の展開は観てのお楽しみだということにしないと
スペースがなくなってしまうので、ここからはあらすじは書かないが
もう駄目だろうと思えるけが人を連れて過酷な旅に出た男が
最後までこのけが人に寄り添って歩く姿に優しさという言葉では
現わせない愛情を感じた

ここまでセリフが無くてもしっかりと伝わってくる
こんな感覚は私も初めての経験かもしれないと思った
主演の男をデンマークの人気俳優マッツ・ミケルセンが演じている
そして監督は、なんと本作が長編映画デビューとなるブラジル出身の
ジョー・ペナという人物である
そしてこの人、ちょっと経歴が面白くて監督の前はミュージシャン兼
YOUTUBERだったらしくオモシロ映像を作ることから始まって
のちにCMや映画にステップアップしていった人だという

デビュー作がこの作品とは、才能は計り知れない

宮田 大  チェロ・リサイタル

宮田 大  チェロ・リサイタル

グランシップの今年度から始まった企画である
「グランシップ リサイタル・シリーズ」の記念すべき第一回目が
このコンサートになるらしい
このシリーズは将来を担う若手演奏家を迎えるシリーズだ
宮田さん本人もコンサートの中で言っていたが、一回目がチェロとは
実に渋い人選だと思う

数ある弦楽器の中でチェロの音色が最も好きな私だが
クラッシックはあまり詳しくないので、日本のチェリストを
ほとんど知らない (外人も超有名どころしか知らないのだが…)
そんな私でも宮田さんだけは名前を知っていた
それはチケットぴあなどでコンサートの情報を調べたときに
宮田さんの名前が何度か出てきたことがあったからだ

おそらくホールクラスの会場でチェロメインでコンサートが
開ける日本のチェリストは本当に少ないと思う
そういった意味から考えると、静岡で宮田さんのチェロを聞くことができて
このリサイタル・シリーズは素晴らしいと思えてくる

会場は満員ではないが、概ねお客さんで埋まっていた
ピアノとチェロだけのコンサートなのでどちらの音色も細部まで
はっきりと聞き取れて、聞きやすいコンサートだった

選曲は多分初心者向けにしてくれてあると思う
クラッシックというよりもう少し、くだけた感じの曲が多かった
ピアソラ(タンゴ)だったり、ガーシュインのように色々なジャンルが
融合した音楽は聞きやすく、そして馴染みやすかった
そして宮田さんのチェロの音色のすばらしさが十分伝わってきた

日本の作曲家である尾高尚忠の夜曲を演奏してくれた
私が唯一持っている宮田さんのCDに入っている曲である
この曲は、尾高が義弟のチェリストのために作曲した曲である
しかもこの義弟とは、宮田さんの師匠である倉田澄子さんの
父親だというから宮田さんにとっても運命な曲だと思う

いつもはCDで聞くこの曲を、初めて生で聞くことができ
私的には大変満足だった