トスカーナの幸せレシピ

トスカーナの幸せレシピ

よくある映画だと言ってしまえばそれまでなのだが
わかっていても私は観てしまうタイプの作品だ
そして観ている間も何となく先が読めるし、とんでもないことなど
起きるはずもないのだが、真面目に観てしまって
おまけに最後には、まんまと感動させられてしまう
この作品は、まさにそんな映画なのだ

こんな書き方をすると、面白くなかったのでは?と
思われてしまうかもしれないが、決してそうではない
これはもう映画の感動枠ジャンルの中の「王道」フォルダの中に
しっかりとしまっておくべき作品だと言いたいのだ

さてストーリーだが
腕は一流で素行が三流といった料理人アルトゥーロが刑務所から
出所するところから始まっていく
アルトゥーロは出所後、刑期の最後である社会奉仕で、
アスペルガー症候群の患者が集まる施設で料理を教えることになる
ここで、この施設で働く心理学者のアンナとの出会いがある

やがてその生徒の中から、絶対味覚をもつ青年グイドが
若手料理コンテストへの出場を決め、アルトゥーロが付き添い兼
運転手兼料理のアドバイスをする先生としてコンテスト会場に
同行することになった
グイドにとって初めての旅行は、アルトゥーロとの二人旅になった

ロードムービー的な要素もあり、コンテストもあり
アルトゥーロとアンナの恋愛や、グイドの片思いなど
てんこ盛り感があり、映画的要素には事欠かない
グイドとアルトゥーロの過去や思いなども次第に見えてきて
物語りは厚みが付けられていった

コンテストの結果など、もうどうでもよくなってしまう展開と
最後にアルトゥーロとグイドたちが楽しそうに働くレストランの
シーンを見れば、この作品が感動枠ジャンルの中の「王道」フォルダの
中にある映画だということを証明している

 

ある船頭の話

ある船頭の話

役者としても唯一無二の存在感を放っているオダギリジョー
私は、彼が主演したテレビドラマ「時効警察」がとても
好きだったことを思い出した もうずいぶん前の話ではある

この映画「ある船頭の話」は、そんなオダギリジョーの
長編映画初監督作品で、約10年前に自身が書いた脚本を
ブラッシュアップしている
私はオダギリジョーの映画感を知るところではないが
勝手な想像では、わかりやすい娯楽作ではなく
人間の内面を描く作品となっているだろうと思い、ちょっと期待していた

そんなことを思いながら鑑賞したのだったが
観終わった感想は、想像した雰囲気の作品だったが期待以上の作品だった
この作品が長編初監督作とは、かなり渋くて狭いところを
突いてきている

ストーリーも渋く、味があってよいのだがこの作品は
まず最初に映像のすばらしさを挙げないわけにはいかないだろう
私は、まだ日本にこんなに素晴らしい場所があるのか?
と思ってしまった
撮影監督はオーストラリア人であるクリストファー・ドイル
ちょっと調べてみると、この人かなり変わった経歴の持ち主なのだが
その一つに幼年期に日本文学を多読したとあった
この風景の捉え方のルーツは、ここからきたものかわからないが
ちょっと納得させられもした
昨年7~8月と今年1月にかけて新潟の阿賀川流域などで撮影したようだが
太陽光を実に効果的に使った映像になっている

ここからやっとストーリーにたどり着いたのだが
何度も同じことを書いてしまうのだが、つくづく渋い話だ
川岸の掘立小屋に暮らし、村と町を繋ぐ船頭を続ける老人のトイチ
映画の中では詳しく語られないが、トイチは暗い過去を持っていた
そのトイチがある日、上流から流れてきた死にかけの少女を助けた
少女はトイチや村人の源三の看病もあり、何とか一命を取り戻した
そしてその少女とトイチの生活が始まるのだった
その少女も作品内では語られないのだが、暗い過去を持っていた

主演のトイチには柄本明、少女を川島鈴遥が演じている
どちらもとても個性的な役どころなのだが、2人とも
存在感抜群で役を演じきっていた

 

人生をしまう時間(とき)

人生をしまう時間(とき)

元々はNHK BS1で放送されたドキュメンタリーだという
私はこの番組は見てないのだが、放送後大変大きな反響があり
日本医学ジャーナリスト協会賞大賞を受賞したという
そのドキュメンタリーに新たなシーンを加え、映画化されたのが
この作品である

だから出演者は全てが一般人であるし、演技もしてない
在宅医療チームの職員と患者とその家族の普段の生活と会話が
続いていく作品である
きっと同じような職種の人が見たら驚きは感じないかもしれないが
医療や介護にほとんど知識のない私にとっては
多くのシーンが初めて見るシーンなのでビックリしたし、新鮮だった
現場の大変さに驚くと共に、人間がもっとも弱くなった最後の最後に
手を差し伸べてくれるこの人々の職業にリスペクトを感じずにはいられなかった

映画の中では2人の医師の診察が中心になっている
ひとりの医師は、80歳になる小堀鷗一郎医師
東京大学医学部付属病院第一外科を定年してから在宅医療に携わっている
明治時代の大文豪であった森鷗外の孫だという
もう一人の医師は、堀越洋一医師
アジア、アフリカ、南米などで医師活動を行った後に在宅医療に携わった
この二人に密着し、在宅治療の現場を撮影しているのだが、その診療の
様子を見れば、きっとほとんどの人が、素晴らしい医師だと思うだろう

私が印象に残ったシーンは、小堀医師が自身の過去と今を語ったシーンだ
東大での外科医時代は機械のように技術だけを研鑽し、患者との
繋がりを持たなかったが、今は患者一人一人と向かいあっている
確かこんな内容の話であったが、端的だが深い言葉だと思った
そして堀越医師が自身の担当患者が亡くなった時に看病した親族に
語られた言葉の暖かさには、大変心を打たれた  この医師が見えた気がした

映画に出てくる患者は認知を含め、治る見込みのない患者ばかりなので
どこか悲観的に考えがちになるが、でも、その中にも笑いありジョークあり
ちっぽけだけど、とてもとても素敵な暖かい空気が感じられた
希望が持てなくても絶望的に考えてばかりではいられないことを
改めて感じさせてもらえた