アメリカの現代写真

アメリカの現代写真

近代写真の父とも称されるウジェーヌ・アジェだが
彼が没後、写真家として高い評価を得るようになったのは
アメリカ人写真家のマン・レイと助手のベレニス・アボットらに
見出されたことが大きく影響している

そんなアジェが亡くなり10年位するとアメリカでは
後に一世を風靡するフォト・エッセイ雑誌「LIFE」の創刊が始まる

私は勝手にこのあたりから写真表現の主導権はヨーロッパから
アメリカに移ったと思っている

この本は現代写真と呼ぶ1950年から1980年代の
アメリカの写真家を、年代やジャンルに分け紹介している
著者は当時のアメリカに住み、その時代の作品に直面していた小久保彰さんである
小久保さんは美術家であり、写真家でもあり写真批評家でもある

この本を読んでみると、小久保さんの広い知識の中、美術的観点から
文化的観点までの広範囲による分析が、分かりやすい文章で解説されている
著者がメモに記した「写真による写真論を展開したかった」という
心意気がそのまま伝わってくるような本である

日本で出版されている写真論的な本の中には、自分の知識をひけらかすだけの駄作や
無意味に難解で、たいていの人には理解できないものが少なくない
そんな中でこの本は誰にでも進められる良本だ 

本の中で、現代写真の中に登場する写真家を少し見れば
この時代のアメリカが、いかに写真史の中で重要かがおおよその人にはわかる

私の好きな写真家  リー・フリードランダー、ダイアン・アーバス
スティーヴン・ショア、シンディー・シャーマンなど全てこの時代に
ピタリと当てはまる

 

ドリームエイジ 長野重一

ドリームエイジ  長野重一

私が個人的に最も好きな日本の写真家である
その長野重一さんの代表作であり、日本の写真史においても
大変重要な写真集である「ドリームエイジ」

1960年代は日本の高度経済成長期の真っ只中だ
若き団塊の世代が猛烈に働き、そして日本は猛烈に豊かになっていった
そんな時代を少し引き気味で、冷静に切り取った写真が並ぶ

一見簡単に撮られているようにみえるが、偶然に起こりうる瞬間的な世界を
逃すことなくカメラで捉え、自分の表現として提示することに
どれほどの力量が必要なのかは、経験したことのある人でなければわからない

高度経済成長がもたらした物質的な豊かさと同時に失った
ゆっくりとした時間や心の余裕など様々な思いを
これらの写真から想像することができる

自分の思考回路を駆使して真剣に視て、そして(わかったつもりになって)
 また考えることの出来る写真が私はとても好きなのだ

王国

王国  奈良原一高

この写真集は、非常に有名でそして高価な写真集だ
作品の発表は1958年だから60年前ということになる
私の持っている本は、1978年のものである
10年位前に古本で買った時、結構な値段だったが
今はその時の買値の倍額で売られている

2014年にこの「王国」は東京国立近代美術館で再展示があった
この展示は、私の持つ写真集のページ順と同じ順での展示であった
そしてそこで、この「王国」の新装版写真集が2000円くらいで販売された
わたしはこれも購入したが、その新装本も最近では見掛けなくなってきた

写真集は北海道の男子修道院を撮影した「沈黙の園」と
和歌山県の女性刑務所を撮影した「壁の中」をまとめたものだ
どちらも外部と隔絶された空間であり、同性が共同生活を送るという
偏った場所でもある

写真を視ると、これら隔絶された場に生きる人間の姿から
そこでの暮らしを想像させられる
さらに、修道院と刑務所とを対比させることにより二つの施設の違いと
事実背景の違いを浮かび上がらせる
奈良原氏はこの手法をパーソナル・ドキュメントと表現していた

これだけの素晴らしい写真表現を発表した当時、奈良原氏はまだ
大学院生であったということも驚かずにいられないだろう