ふたりの女 平成版

ふたりの女 平成版 ふたりの面妖があなたに絡む

作 唐十郎の演劇は劇団唐組の演じた作品を何作か観ているが
どの作品もスピード感があり、話の展開も劇的でセリフも洒落ている
そしてどこか懐かしく、物悲しい

この作品「ふたりの女」は初めて観るのだが、本作は
演出はSPACの宮城さんで、俳優陣もSPACの演じる作品である
SPAC版「ふたりの女」は2009年が初演で
その後好評で、何回か演じられているようである

会場は日本平の舞台芸術公園内にある屋外劇場「有度」であった
この屋外劇場の設計者は、磯崎新さんだという
磯崎さんは、今時の人である
最近のニュースで度々目にした人も多いと思うが、2019年
「建築界のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を受賞した建築家である
私はこの劇場で何度か観劇したことがあるが、山の緑を感じられ開放感あり
独特の雰囲気を持った素敵な劇場である

さてストーリーだが、タイトルの通りふたりの女が主人公である
厳密には精神を病んだ「六条」という女が事の始まりで、その後も
他の二人に大きく影響を与え続けるので、主人公だろう
源氏物語の三角関係にチェーホフの「六号室」をミックスさせた
ストーリーだという(これを聞くと、何かすごく難解に思えてくる…)
これをベースに、平成版として設定を変えているのだと思う

妻の出産を控えた医師の光一が、自身の勤務する精神病院の
患者である六条に声を掛けられるところからストーリーは始まる
そこから光一と六条と妻のアオイの3人が絡み合う愛憎劇である
ストーリーの芯はごくシンプルなのだが、色々な枝葉が出ていて
単純な劇とはなっていない
そして話の展開やセリフには、唐十郎劇の雰囲気が
感じとれる作品となっていた

クライマックスをある種のショー的に演出するのは
この会場が赤テントではなく、屋外劇場である事なのかもしれない
開演時はまだ明るかった空はすっかり暗くなり、舞台を色映えさせる
天然暗幕のようだった

終演時は少し肌寒かったが、屋外にいることが
気持ちの良い季節になったとつくづく思った

LIFE LIFE LIFE ~人生の3つのヴァージョン~

LIFE LIFE LIFE  ~人生の3つのヴァージョン~

この舞台ちょっと面白いのが、最初の発表では2006年に
同じキャストで上演された舞台を、当初は13年ぶりに再演する予定であった
演目は「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?」である

この作品は2007年の読売演劇大賞を受賞し、出演した段田安則は
同賞で大賞・最優秀男優賞を受賞した
当時も注目されていた舞台であったのだが、私は残念ながら観劇してない
チャンスがあれば観劇したかったが、チケット入手は大変難しかった

そんな注目公演が演出、キャスト、上演時期、公演会場はそのままで
何と何と演目のみが変更された
変更された演目が、この「LIFE LIFE LIFE」である

 作  ヤスミナ・レザ
 演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
 出演 大竹しのぶ
    段田安則
    稲垣吾郎
    ともさかりえ

出演者は13年の年月を経ても依然として芸能界で
光り輝いている人たちばかりである
当然チケットは大変入手困難であったが、当たってしまえば
もう行くしかないだろう

ストーリーは、二組の学者夫妻が引き起こすドタバタ劇だ
ある夜、宇宙物理学者アンリ(稲垣)とキャリアウーマンのソニア(ともさか)
夫婦は、就寝前のくつろぎたい時間になってもなかなか寝付かない
子供に手を焼いていたのだが、そんな中突然に来客を知らせる呼び鈴が鳴った
扉の前には、何と招待日を1日間違えて訪れてきたアンリの上司
ユベール(段田)とイネス(大竹)夫妻が立っているのだった
突然の来訪に慌てふためく二人だったが、居留守も使えず
部屋に招き入れるのであった

面白いのが招き入れてからのヴァージョンが3つ用意されている
最もアンリが上司に気を使っているヴァージョンが、最初だった
私はこの(気の弱いアンリ=稲垣)にハマってしまったので
その後の二つのちょっと強いアンリには、違和感を感じるほどであった

演出のケラリーノ・サンドロヴィッチの得意とする
言葉遊びのような独特の言語感覚とスピード感
そして先程まで味方だったと思っていた人間が、一言を機に
最悪の関係になってしまうような展開の速さと
危機感伴う緊張感を十分感じることができた

 

舞台 かもめ

舞台 かもめ

新国立劇場でチェーホフの不朽の名作である「かもめ」を観劇した
この公演は全キャストをオーディションで選考したという
小川絵梨子芸術監督になって毎シーズンに1本は
このような作品の制作形態のものを発表するらしい
斬新なこの企画は、役者にとっても演出側にとっても大変新鮮で
刺激的だと思う
更に観る側にとっても、どんな演劇になっているか大変楽しみであった
そしてこの作品、小川絵梨子芸術監督自身が新訳を行っている

私はこの劇を観るので、少し前に新潮文庫から出版されている
神西清さん翻訳の「かもめ・ワーニャ伯父さん」を読んで予習していた
それだからということもあり、ストーリーについていけなくなることは
なかったし、配役もすぐに理解できた

この作品は、多分ストーリーを全く知らない人が観たとしても
本と比べても、相当わかりやすくなっていると思った

本の中では、このタイトルである「かもめ」が登場する場面は
意外に少なかったような気がする
しかし演劇では、連想される場面に積極的に「かもめ」という言葉を使い
この演劇を理解しやすものにしていた
そして、戯曲内の信じられないくらい長いセリフも舞台の中では無く
洗練された端的な言葉に変わって、とてもスムーズに進行していた

途中15分の休憩を入れて2時間50分の長時間の舞台であるが
時間の経過を感じさせないほどストーリーに引き込まれた

脚本は難しい
どの位のわかりやすさを目指すかで、出来るものが全く違うと思う
私は、わかりやすさと観る側の想像力は反比例すると思っている
それは、わかりやすすぎると想像力は湧かないし、わかりにくければ
その逆になると考えられると思うのだ
そう考えると、どのあたりを狙うかは観客の知識レベルにもよってくるだろう
そんなことを思いながら観劇した